1997 Fiscal Year Annual Research Report
「水資源会計」構築に関する理論的実証的研究-「空間経済学」の提唱に向けて-
Project/Area Number |
09876059
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
西頭 徳三 愛媛大学, 農学部, 教授 (70026582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 淳 愛媛大学, 農学部, 助手 (90229435)
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Keywords | 水資源会計 / 水質浄化事業 / 自然合体資産 / 環境形成 / 維持機能社会資産 / 土地合体資産 / 環境権 / 共同持ち分 |
Research Abstract |
本研究は一定の流域内の水と土を中心とする「環境形成・維持機能」の経済的計測と計測システムの創出、「水資源会計」の構築を目的をしている。初年度である平成9年度には、岡山県児島湾周辺地域を対象として、児島湖(人工湖)の社会資産的評価を行うと同時に、児島湖の関連社会資産のバランスシート作成に関する理論的検討を行った。 児島湖は1985年に「湖沼法」の指定を受け、水質規制の対象となった。そして1991年に農林水産省は水質浄化のための「児島湖沿岸地区総合防災事業」を計画した。したがって児島湖の社会資産(Community Assets)的価値の計測は、この国営事業が比較検討後に採用した「底質改善工法」による総事業費280億円と事業による児島湖の耐用年数80年をベースに行った。 水質浄化事業による年更新効果は総事業費に還元率を乗じて1,562,400千円と計測された。さらに年作物生産効果額128,837千円を加えて、年総効果額は1,690,237千円となった。そして水質浄化事業が耐用年数80年間にわたり、このような年総効果額を発現しうることから妥当投資額28,455,168千円を算出した。つまり、この妥当投資額は従来、自由財として経済価値を認められなかた児島湖における浄化に対するキャパシテイ維持のためのコストであり、費用価評価法による経済価値であることから、児島湖の社会資産価値とした。 次に児島湖の関連社会資産のバランスシート作成に関する理論的検討を行い、借方項目を、I自然合体資産(児島湖)、II土地合体資産(干拓地、農道など)、III農業用水利施設(締切堤防、揚排水機場など)、IV金融資産(現金、債券など)、貸方項目を、環境権(次世代持ち分であり、負債性ストック)と共同持ち分(現世代の共同利用権)に区分した。 なお児島湖以外の社会資産的評価に関する課題は次年度以降に行う予定である。
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