1997 Fiscal Year Annual Research Report
開放・閉鎖浸透と水稲生育および窒素の動態に関する研究
Project/Area Number |
09876060
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐々木 長市 弘前大学, 農学生命科学部, 助教授 (30162374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 信彦 弘前大学, 農学生命科学部, 助手 (20261430)
小関 恭 宮城県農業短期大学, 農学科, 教授 (90070218)
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Keywords | 浸透形態 / 酸化還元 / 開放浸透 / 稲の生育収量 / 窒素濃度 / 鉄イオン |
Research Abstract |
砂礫水田のモデル土柱を作製し、心土層の浸透形態(閉鎖浸透と解放浸透の両者を指す)の相違が層内の化学的成分動態及び作物の生育収量へ及ぼす影響を調査した。モデルは作土(12.5cm)、スキ床(10cm)、心土(35cm)の3層構成とした。浸透形態の制御は、心土層を対象とし、排水位の高低でその制御を行った。このような環境下で水稲(つがるおとめ)を栽培し浸透形態との対応関係を検討した。 調査は、降下浸透水の深度別水質の変動(鉄、マンガン、カリ、窒素、燐等)、稲の生育収量調査(草丈、葉齢、茎数、穂数、穂長、籾数、玄米千粒重)、根の活性及び根量である。これらの調査は、毎週1回の目安で実施した。ただし、根の調査は稲刈り後の1回のみとした。 その結果、心土層が開放浸透時には層内は酸化状態を、閉鎖浸透時には還元状態を示した。降下浸透水の鉄、マンガンイオン濃度は、作土スキ床層の還元層で高く、心土層が酸化層の場合には著しくその濃度を低下させる傾向となった。しかし、両イオン濃度は心土層が還元層の場合には開放浸透に比べ高い濃度ではあるが、検出される濃度は下方に行くにしたがい低下する傾向となった。窒素濃度は、心土層が酸化層の場合には観測初期に硝酸態の窒素濃度が還元層の値に比べ高まる傾向(40日目頃まで)であったが、時間の経過と共にその増加傾向は認められなくなった。燐及びカリイオン濃度では、浸透形態の相違による差異は明瞭とは判断し難かった。 生育収量調査の結果、統計的に有意差のはっきりした調査項目はなかった。しかし根の活性は、酸化層の根が還元層のそれに比べ2倍以上の値となった。さらに、根量も開放浸透層が閉鎖浸透層より多くなった。このことより、根の環境としては酸化層(=開放浸透層)が好ましい条件であると判断された。また根の色は、還元層では赤く、酸化層では白くなる特性が認められた。
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