1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09876075
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
佐藤 正宏 東海大学, 総合医学研究所, 助教授 (30287099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 穣 東海大学, 医学部, 教授 (10146706)
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Keywords | 遺伝子導入 / マウス / リポソーム / 精巣 / 受精卵 / 胚盤胞 / DNA / ベータガラクトシダーゼ |
Research Abstract |
<序論>トランスジェニックマウス(Tg)の作製及びその解析は、遺伝子の生体における機能の探索、疾患モデル動物の作製、等の観点から、分子生物学の分野において今や必須のテクノロジーとなっている。このTgを得る方法としては、micropippeteを用いた受精卵核へのDNAの顕微注入法(MI法)が最も広く採用されている。しかし、この方法は、効率性が低く、しかも操作性は決して容易ではない。我々は、このMI法に代わる簡便で且つ効率的な方法を探索して来たが^1、今回、マウス精巣へ直接外来性DNAを注入することにより、精巣内精子に外来性DNAを取り込ませ、その形質転換を受けた成熟精子が受精を通じ、卵側へ外来性DNAを伝達し、最終的にTg卵、ひいてはTg個体の作製が可能ではないかと考え、以下のような実験を組み、その可能性を検討した。 <方法>外来性DNAとして大腸菌由来β-galactosidase遺伝子(β-gal)あるいはヒトアミロイド前駆体蛋白C末端側をコードするcDNA(NORβと呼ぶ)を内蔵するプラスミドの2種を用いた。いずれの遺伝子あるいはcDNAもその発現は、cytomegalovirus enhancer/ニワトリβ-actin promoter[宮崎純一博士(阪大)からの供与]により制御されている。これらDNAを環状のままLipofectin^<TM>reagent(GIBCO BRL社)と複合体(1個の精巣当たり40μl)を作らせ、これを30ゲージの注射針にてICR雄マウス(生後10-15週齢)精巣の深部へゆっくり注入した。注入後、2日目から5日目まで連続して発情期ICR雌と交配させた。発生した妊娠中期胚からgenomic DNAを単離し、PCR-Southern法にて外来性DNAの存在を調べた。 <結果/考察>注入後2日目で交配して得られた胎仔の最高で91%が外来性DNAを保持していた。しかし、注入後の時間経過に従い、胎仔の外来性DNA保持率は低下した。外来性DNAは、1細胞当たり1copy以下であった。妊娠中期胎仔における外来性DNAの発現は残念ながらRT-PCR法、lacZ発現検出のための組織化学的検索をもってしても見られなかった。以上の結果から、1)1回のDNA注入でマウス子孫への遺伝子伝達が可能であること、2)外来性DNAはマウス胎仔組織では、キメラ状に存在している可能性があること、等が結論として得られた^2。 <展望>今後の課題としては、導入遺伝子の発現を現出させるための条件(多コピーの遺伝子を導入出来る条件等)を探索すること、次世代への遺伝子の伝達性を調べること、導入遺伝子の組織局在性を調べること、等が挙げられる。 ^1Sato et al,Animal Biotech.5,19-31(1994);^2Sato et al,印刷中
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Research Products
(1 results)