1997 Fiscal Year Annual Research Report
原虫病に対する組み換えワクチンの開発に関する基礎研究
Project/Area Number |
09876078
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 治城 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科学科, 教授 (80261957)
|
Keywords | リーシュマニア症 / LACK / L.donovani / 組み換えワクチン / RT-PCR / 人獣共通感染症 / PROMASTIGOTE / L.chagusi |
Research Abstract |
リーシュマニア症は、サシチョウバエを中間宿主とする人獣共通感染症であり、臨床的に内臓型、皮膚型および皮膚粘膜型に分けられる。近年、L.major感染Balb/cマウスCD4+ T cellの標的抗原として、Leishmania homolog of receptors for activated C kinase(LACK)が発見された。感染マクロファージによるLACKの抗原提示は感染初期に限られ、慢性期には抗原提示されない。LACKがリーシュマニア原虫感染の初期における免疫的防御に重要であると考えられることから、LACK抗原を用いた組み換えワクチンの開発を考えた。そのために今回我々は、内臓リーシュマニア症を引き起こすL.donovaniのLACK cDNAをRT-PCR法によりクローニングし、その一部塩基配列を決定した。 「材料と方法」 L.donovani MHOM/CN/86/Sc-6株のpromastigoteよりtotal RNAをacid guanidinium-phenol-chloroform法により抽出し、これを鋳型として、RT-PCR法によってLACK cDNAを増幅した。用いたprimerは、既知のL.major LACK cDNAの蛋白コード領域の上流および下流的50bpの塩基配列より設計した。RT-PCRにより増幅されたバンドを、T4 DNA polymerase処理により平滑末端化した後、pBluescript SK+のEcoRV siteにクローニングし、塩基配列を決定した。 「結果および考察」 RT-PCRにより、予測される約1100bpバンドが増幅された。共通のRNAサンプルからRT-PCRにより別々に増幅したフラグメントに由来する2クローンについて塩基配列を決定した。これら2クローンの塩基配列は2塩基異なっており、この相違が、RT-PCR時におけるエラーによるものかどうかは今後の課題である。今回得られた2クローンの蛋白コード領域の塩基配列は、内臓リーシュマニア症を引き起こすL.chagasi、皮膚リーシュマニア症を引き起こすL.majorのLACKとそれぞれ約99.8%、約98.1%の相同性を示した。このことから、LACKが種間で非常に保存性の高い分子であること、さらに、内臓リーシュマニア原虫間の相同性の方が、皮膚リーシュマニア原虫との相同性より高いことが明らかとなった。
|