1997 Fiscal Year Annual Research Report
精子成熟にともなう精子細胞膜の分子形態-原子間力顕微鏡による研究
Project/Area Number |
09877001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 和厚 北海道大学, 医学部, 教授 (10001869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 廣子 北海道大学, 医学部, 講師 (60002333)
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Keywords | 精子 / 細胞膜 / 表面付着物質 / 原子間力顕微鏡 / 精巣上体 / 部位差 / マウス |
Research Abstract |
正常成熟マウスから精巣上体をとりだし,頭部と尾部をわけてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)にいれ,割断面から出てきた精子(ヒモ状になって出てくる)をPBSに浮遊させ,ついで遠心分離により精子を洗浄した.この精子をポリLリジン処理スライドガラスに滴下して,2%グルタールアデルヒド(0.1Mリン酸緩衝液)で固定し,蒸留水で洗浄,アセトン脱水し,自然乾燥した.一部の標本は酢酸イソアミルをへて,臨界点乾燥した.このスライドグラスを原子間力顕微鏡(SPI-3800,セイコ-電子)にセットし、実体顕微鏡で精子の頭部を探し,これをカンチレバ-の針下において,ついで原子間力顕微鏡で振動モードで観察し,その凹凸像と変位像を得た. マウス精巣上体尾部から採取した精子頭部は部位により膜表面の凹凸の形状が異なっていた.マウス精子頭部は長さが8μm,厚さが5μm程度の鎌形をしている.その中味は大部分が濃縮した核で,先体とよばれる袋を帽子のようにかぶっている.この袋のなかには精子が卵細胞に近づくために卵細胞をとりまく殻を溶かす酵素がはいっている.先体をかぶる部位は核の形に応じて鎌形を呈し,大彎側辺縁にそう主部と頭部の前3分の2を覆う赤道部にわかれ,これより後の先体後部と区別される.赤道部と先体後部の境界部を中心に拡大して観察すると,両部の境界線にそって50〜100nm程度の顆粒が配列し,これを境に赤道部は平滑で,先体後部は粗な面を呈していた。さらに拡大すると先体後部表面には10〜50nm程度の顆粒が不規則に凝集して,一方,赤道部の表面には約10nmの小さな顆粒がまばらに散在していた.このような場所による差異は精巣上体の頭部から採取した精子では明瞭ではなかった.先体後部は受精のさいに卵細胞膜と融合するといわれており,この部位が精巣上体尾部で多量の細胞外物質で覆われているようにみえることは興味深い.
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