1998 Fiscal Year Annual Research Report
精子成熟にともなう精子細胞膜の分子形態-原子間力顕微鏡による研究
Project/Area Number |
09877001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
阿部 和厚 北海道大学, 医学部, 教授 (10001869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 廣子 北海道大学, 医学部, 講師 (60002333)
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Keywords | 精子頭部 / 細胞膜 / 先体反応 / 原子間力顕微鏡 / マウス |
Research Abstract |
精子の頭部は,帽子を被るように酵素をいれる袋状の先体に包まれる.精子は卵細胞に近づくと先体反応、すなわち先体の膜が破れて酵素を放出する.これにより精子は卵細胞をとりまく透明な膜を溶かして卵細胞に接近し,ついで精子頭部の細胞膜と卵細胞の細胞膜との融合がおこって,精子は卵細胞に侵入,受精する.このように精子頭部の細胞膜は先体反応や受精に際し,大きく変化する.そこで今年度は,精子頭部の細胞膜変化をより深く理解するために,試験管内で精子を培養することにより精子に先体反応を起こさせて,精子頭部の膜表面の変化を原子間力顕微鏡で観察した. 成熟マウスから精巣上体尾部をとりだしてリン酸緩衝液にいれ、割断面からでてきた精子を浮遊させ,ついで遠心分離により精子を洗浄した.そのあと精子は先体反応を起こさせるために,m-TALP3培養液を用いて5%CO2インキュベーターで4.5時間,37℃で培養した.この精子をシランカップリング剤をコートしてあるスライドグラスに滴下してガラスに接着させ,2%グルタールアルデヒドで固定し,蒸留水で洗浄、エタノール脱水して酢酸イソアミルをへて臨界点乾燥した.このスライドグラスを原子間力顕微鏡(SPI-3800,セイコー電子)にセットし,振動モードで観察し、その凹凸像と変位像を得た. 先体反応を起こした精子は起こしていない精子と膜表面の凹凸の形状が異なっていた.先体反応を起こしていない精子の頭部は全体的に直径50nmの粒子で被われていたが,先体反応を起こした精子では頭部の膜の一部に約1.5倍の直径をもつ大きな粒子が密に出現していた.この大きな粒子の出現はこの部位の卵細胞との膜融合能力獲得と関連があると考えられ,興味深い.
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