1997 Fiscal Year Annual Research Report
新規冬眠特異的タンパク質(HP)の脳内存在様式と局在性に関する研究
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09877014
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
近藤 宣昭 (財)神奈川科学技術アカデミー, 冬眠制御プロジェクト, 研究員 (40270699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関島 恒夫 (財)神奈川科学技術アカデミー, 冬眠制御プロジェクト, 研究員 (10300964)
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Keywords | 冬眠 / シマリス / 冬眠特異的タンパク質 / 脳脊髄液 / 血液-脳脊髄関門 / 年周リズム |
Research Abstract |
本年度は、シマリスの脳内液と血液を定期的に採取し、抗HP抗体を用いた免疫化学的方法により両者の量的変化を検討した。 シマリスは麻酔下で、側脳室にカニューラを挿入し、低温(5℃)・24時間暗条件下で一年を通して飼育した。この様な状態で飼育されたシマリスは、年周リズムで調節された冬眠を起こす。定期的に採取した脳脊髄液と血漿中でのHP濃度を測定した結果、血中では活動期に高く冬眠期に低くなるのに対し、脳内でのHP濃度は逆に活動期から冬眠期にかけて著しく増加することを明らかにした。 さらに、活動期、活動-冬眠移行期、冬眠期、冬眠-活動移行期を詳細に検討した結果、血漿中のHP濃度は冬眠開始前から減少し始め、冬眠前期にその濃度が最低となった後、冬眠後半期から覚醒期にかけて漸進的に増加する傾向を示した。一方、脳脊髄液中のHP濃度は、活動期から冬眠開始期、冬眠開始期から冬眠期にかけて増加が認められた。但し、活動期から冬眠期にかけてのHPの増加パターンは2つに区分することができ、冬眠開始前に著しく増加するタイプと冬眠開始後しばらくしてから急激な増加が見られるタイプが存在した。両タイプともに、HPの急激な増加は10日から20日以内に生じた。冬眠期間中にピークに達した脳内HP量は冬眠覚醒前に減少し、その後個体は冬眠状態から活動状態に移行した。 本年度の研究において、脳脊髄液中のHP量の増加が冬眠に先立って急激に起こることを明らかにし、脳室脈絡叢に存在する血液-脳脊髄液関門を通して、冬眠前にHPが血中から脳内に輸送されている可能性を示した。
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[Publications] Sekijima,T.: "Existence of hibernation-specific proteins (HP) in the brain of chipmunks." Japanese Journal of Physiology. 45. S179 (1997)
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[Publications] Kondo,N.: "Hibernation-specific protein as a signal factor for hibernation." Japanese Journal of Pharmacology. 76(in press).