1997 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌嫌発系copラットから乳癌抑制遺伝子Mcs-1の同定と機能解析
Project/Area Number |
09877046
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
神谷 研二 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (60116564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
隅井 雅晴 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (60284220)
宮川 清 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (40200133)
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Keywords | ラット乳腺上皮細胞 / コペンハーゲンラット / Mcs-1 / 乳癌抑制遺伝子 / 乳癌嫌発系ラット / 乳腺細胞株 |
Research Abstract |
乳癌嫌発系Copenhagen(COP)ラットは、単一の常染色体優性遺伝子Mcs-1で乳癌発生が抑制されている特異なラットである。Mcs-1は、乳腺細胞の分化を制御していると推定されている。Mcs-1が、細胞不死化に関与するか否かを検索する目的で、まずCOPラット乳腺から乳腺上皮細胞株の樹立を行った。細胞株の樹立は、以下の方法で行った。Collagenaseで処理した乳腺組織を10%FBSを添加した乳腺培地を用いた初代培養系に導入し、その後段階的に血清濃度を低下させ、最終的には無血清培地で長期の静止的培養を行った。この間、継代培養は行わず、立ち上がて来た不死化細胞をクローン化し細胞株とした。同一の方法により、乳癌好発系F344ラット、並びに(F344xCOP)F1ラット、及び(COPxF433)F1ラットからも乳腺細胞株の樹立を行った。F1ラットから乳腺細胞株の樹立を行った目的は、遺伝的多型を利用した、LOH解析を行う為である。その結果、COPラットからは、用いた20匹中2匹(10%)においてのみ細胞株の樹立に成功した。一方、F344ラットからは5匹中5匹(100%)から細胞株が得られ、(COPxF433)F1ラットでは、20匹中11匹(55%)、(F344xCOP)F1ラットでは34匹中5匹(14.7%)からそれぞれ細胞株が得られた。細胞株の樹立に成功した1匹のラットからは、2-20個の細胞クローンを分離した。この様に、細胞株の樹立し易さにもラット系統による差異が認められ、乳癌発生の感受性の高いF344ラットが最も樹立頻度が高く、乳癌抵抗性のCOPラットせは最も低かった。樹立した乳腺由来細胞の細胞生物学的解析を行った。樹立細胞は、蛍光抗体法ではkeratin陽性で、電顕的にもdesmosome及びmicrovilliを認め上皮細胞の特性を有した。樹立細胞は、無血清培地でinsulin,EGFに対し用量依存的に増殖した。F344ラットから樹立した乳腺細胞株を同系ラットの脂肪織に移植すると乳腺の腺腔構造を形成した。この細胞株に活性化rasを導入すると、comedo型乳癌を形成した。以上の事より、樹立した乳腺由来細胞は、乳癌になり得る乳腺上皮細胞である事が判明した。現在、これらの細胞株を用いて、染色体解析とLOH解析を行いMds-1の関与を検討している。
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