1998 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陰性菌における消毒薬耐性機構の分子遺伝学的解析
Project/Area Number |
09877058
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
太田 伸 信州大学, 医学部附属病院薬剤部, 助教授 (30233125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 哲也 信州大学, 医学部細菌学, 助教授 (10173014)
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Keywords | 消毒剤耐性 / クロルヘキシジン / セパシア菌 / フルオレッセンス菌 / 塩化ベンザルコニウム |
Research Abstract |
(1) 昨年度までにセパシア菌PCJ1株の遺伝子ライブラリーの作成、大腸菌でのCHX(クロルヘキシジン)耐性遺伝子のスクリーニング、セパシア菌CHX感受性変異株での大腸菌-セパシア菌間接合伝達系を用いた耐性遺伝子のスクリーニングを行ったが、様々な理由によりCHX耐性遺伝子をクローン化することができなかった。本年度は、セパシア菌において使える数少ない耐性マーカーであるCp耐性遺伝子をもつ広宿主域プラスミドベクターを用いて新たなPCJ1株遺伝子ライブラリーを作成し、セパシア菌CHX感受性変異株への形質転換によりCHX耐性遺伝子をクローン化することを試みた。遺伝子ライブラリーの作成においてはインサートの挿入効率が悪く、また、接合と同じく形質転換の効率も悪かったため、耐性遺伝子のスクリーニングに十分な数のライブラリーの作成できなかった。この形質転換の効率の低さはセパシア菌のrestriction-modification系によるものと考えられたため、現在いったん形質転換効率の高い大腸菌においてPCJ1株の遺伝子ライブラリーを作成し(約2000クローン)、個々のプラスミドDNAの精製を行っている。今後、コロニーの得るのに十分な量のプラスミドDNAを用いてセパシア菌CHX感受性変異株への形質転換を行い、CHX耐性遺伝子をクローン化する予定である。 (2)セパシア菌のCHX耐性の解析と平行して、セパシア菌と同様に消毒剤耐性菌として臨床的に問題となってぃるフルオレッセンス菌(Pseudomonas fluorescence)のBAC(塩化ベンザルコニウム)耐性についての解析を行った。既に分離されているBAC超高度耐性菌の性状を解析した結果、i)BACの吸着量は若干低下してはいるものの、本菌の高度耐性を説明するだけの低下は認められないこと、ii)ゼータ電位測定により、BACの吸着によると考えられる菌体表面陽性電位の異常な亢進が認められた。本菌のBAC耐性の機序として吸着の量ではなく様式の違いが考えられ、また、本菌特有の吸着様式としては通常の陽性の極性基によるものでなく、疎水基を介した吸着様式をとることが示唆された。そこで、本菌の菌体表面の性状を検討したところ、表面の疎水性には感受性菌と比べて大きな違いがなく、陰性荷電が測定感度以下に消失していた.したがって、本菌は菌体表面の陰性荷電を消失させることにより疎水基を介した殺菌効果のない様式でBACを吸着するため、BACに対する超高度耐性を獲得しているものと考えられた。このような耐性機構の存在はこれまでに報告がなく、新規の消毒剤耐性機構であると思われる。
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