1997 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶剤による依存性の形成、維持、消失過程の行動学的分析と神経メカニズムの解明
Project/Area Number |
09877180
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 博美 北海道大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (90191832)
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Keywords | トルエン / 依存性 / 条件性場所選好 / ラット |
Research Abstract |
白黒2つの箱からなる場所選好実験装置(以下CPP装置)を用いて、ラットにトルエン依存性がどのように形成されるか検討した。はじめに1日30分連続3日間、CPP装置に対する順応訓練を行った。続いてラットを30分間CPP装置内を自由に探索させ、白黒それぞれの箱に滞在した時間を測定した。その結果、全てのラットが黒色の箱により滞在し、黒の箱への場所選好が認められた(pre-test). 翌日から依存性の形成実験を行った。ラットを30分間黒色の箱に入れ、清浄な空気を吸引させた。30分おいて、今度はトルエンガスを発生させた白色の箱に30分間ラットを入れた。実験終了後、ラットはそれぞれの個別ケージに戻した。この訓練を15日間行った後、30分間再びCPP装置を自由に探索させ、白黒どちらの箱に長く滞在するのかを測定した(post-test)。もし依存性が形成されていれば、トルエンガスを吸引することができた白色の箱により長く滞在すると予想される。トルエンガスは、1、3、6mlのトルエンを室温で自然気化させることによって発生させた。 実験の結果、全てのラットは白色の箱により長く滞在するようになり、トルエンガスを吸引できた黒色の箱をむしろ避けるようになった。このことはラットに依存性が形成されなかったことを示している。依存性の形成がうまく行かなかった原因および今後の対策として次のことが考えられる。1、トルエンの濃度。より低濃度または高濃度で試してみる。2、依存性形成の訓練期間。訓練期間をさらに長くする。3、シンナーの利用。乱用が生じやすいシンナーを利用する。4、自発的なトルエン吸引。強制的にトルエンガスを吸引させたことが嫌悪条件となったのではないか。自由にトルエンを吸引できる方法を考える必要があるかもしれない。
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