1997 Fiscal Year Annual Research Report
感覚情報の処理に関するヒト高次脳機能の非侵襲的研究
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09877185
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Research Institution | Tokyo Institute of Psychiatry |
Principal Investigator |
橋本 勲 (財)東京都精神医学総合研究所, 精神生理部門, 参事研究員 (40250211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 義信 (財)東京都精神医学総合研究所, 精神生理, 技術部研究員
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Keywords | 体性感覚脳磁界 / 高周波信号 / 抑制系メカニズム / 振動刺激 / 高次情報処理 / 加算作業 |
Research Abstract |
体性感覚の早期情報入力段階における脳活動 体性感覚脳磁界(SEFs)の皮質一次応答(N20m)が体性感覚3b野で記録され、さらに、これに重畳する300-800Hzの高周波信号も記録された。この2つの脳活動は、覚醒時と睡眠時で相反する関係にあった。皮質3b野における錐体細胞尖頂樹状突起EPSPの集合を反映するN20mと重畳する高周波信号の相反関係の成因として、抑制系メカニズムが示唆された。覚醒・睡眠という意識状態の変化だけではなく、刺激への注意といった選択的な意志にも、このメカニズムが関与することを掴みつつある。 また、自然皮膚刺激に対する脳活動の基礎研究を行った。ピエゾ素子を用いた振動刺激を右手各指の先端や手掌に与え、122チャンネル全頭型SQUID磁束計を用いてSEFsを計測した。種々の刺激条件下において再現性の良い脳の応答が得られた。振動刺激により、潜時30-60msに刺激反対側に一次体性感覚野の活動が認められた。これよりさらに数10ms後れて二次体性感覚野と体性感覚連合野の活動が認められた。 視覚に基づく高次情報処理に関わる脳活動 視覚情報処理の脳内動態を検討するために、視覚的に呈示した数字を加算する作業を行い、誘発脳電位を記録した。300ms以前に出現する電位成分は、刺激の空間位置や形状などの物理的属性を処理する段階と考えられ、特に180-200msに出現する成分の位相の前進、振幅の増強は非空間的属性への注意を反映することが示唆された。300msに出現する陰性電位は数字の意味属性の認知、500-800ms、および、その後1100msまで続く陰性電位は、それぞれ、加算作業のための数的処理、および、計算結果の短期記憶保持を反映すると考えられ、時間軸上に直列に行われる脳内情報処理が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ozaki,I., Suzuki,C., Yaegashi,Y., Baba,M., Matsunaga,M., Hashimoto,I.: "High frequency oscillation in early cortical somatosensory evoked potentials" Electroenceph.Clin.Neurophysiol.(in press). (1998)
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[Publications] Nakano,S., Imamura,S., Tokunaga,K., Tsuji,S., Hashimoto,I.: "Evoked potentials in patients with chronic respiratory insufficiency" Internal Medicine. 36(4). 270-275 (1997)
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[Publications] 橋本勲、中野修治、尾崎勇、益子拓徳、今田俊明: "体性感覚系における高周波脳電位・磁界振動の生理学的基礎" 臨床脳波. (in press). (1998)
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[Publications] 福島達臣、橋本勲: "インターフェロンによる末梢神経障害・電気生理学的検討" 臨床脳波. 39(9). 593-597 (1997)
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[Publications] 斉藤泰彦、井口義信、中野修治、橋本勲: "体性感覚刺激による事象関連電位成分の要素波解析" 足利工業大学研究集録. 24. 201-205 (1997)
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[Publications] 橋本勲: "脳磁図による脳の活動の非侵襲的観測" 脳の科学(98年増刊号). (in press). (1998)