1998 Fiscal Year Annual Research Report
開胸術後に肺傷害をもたらす胸腔内炎症の発生機序の解析と制御に関する研究
Project/Area Number |
09877255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小野 貞文 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (80250827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 重文 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (40006078)
谷田 達男 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (20217144)
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Keywords | 開胸術 / 肺傷害 / 胸水 / G-CSF / 好中球 |
Research Abstract |
本研究は、開胸術後の肺傷害発生機序における局所炎症の意義の解明と制御を目的としたものである。肺癌や気胸などの呼吸器疾患にて開胸術を受けた症例を対象とし、開胸術後の局所炎症の解析と定量化を試みた。開胸肺切除術後に留置された胸腔ドレーンから経時的に胸水を採取し、その量と白血球、好中球数を測定した。また経時的に末梢血液を採取し、白血球、好中球数を測定した。さらに、肺全摘術、肺葉切除術、肺部分切除術の3群に分け、術式間の差について検討した。開胸術後の胸水の量、好中球数とも手術24時間後をピークに増大し、その後漸減した。好中球分画は、成熟細胞が90%以上あり、その量は同時期の末梢血液に比し高値であった。また両者とも、肺部分切除術で最も高値を示し、次いで、肺葉切除術、肺全摘術の順であった。以上から、開胸術後の胸腔内では、何らかの好中球遊走化因子が発生し、末梢血液から好中球が動員、胸腔内へ遊走されるものと推定された。その量が残存臓側胸膜の多寡に依存していたことから、好中球遊走化因子の発生母体としては、開胸術時の胸腔内操作により炎症が惹起される臓側胸膜が考えられた。好中球遊走化因子のひとつであるG-CSFは、胸水中の好中球数と密接に関連して推移し、また、臓側胸膜、壁側胸膜から産生され得ることが確認された。好中球は種々のElastaseやフリーラジカルを発生し、組織傷害をもたらすことから、開胸術後の肺傷害発生機序において、胸腔内操作による臓側胸膜の局所炎症と、産生されるG-CSFが重要な意義を有していると考えられた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 西村俊彦: "開胸術後急性期における胸水中および末梢血液中のGranulocyte colony-Stimulating factor(G-CSF)と好中球の動態解析と産生組織に関する研究" 加齢医学研究所雑誌. 50(2). 62-68 (1999)
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[Publications] Satoshi Suzuki: "Decrease in Transulvedar Flud Absorption after Alueolan Hypoxi2 in rat." Progress in Montain Medicine and High Altitude Physiology. 418-419 (1998)
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[Publications] 小野 貞文: "慢性肺気腫の肺循環と肺容量減少の効果" 日本胸部疾患学会雑誌. 35. 91-95 (1998)
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[Publications] 久保 裕司: "CD18依存性、非依存性の好中球遊走における細胞内情報伝達物質UFEBの関与" THERAPEUDIC RESEARCH. 19(4). 18-21 (1998)
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[Publications] 谷田 達男: "好中球の接着能亢進による肺血管透過性亢進と活性酵素種の関与" 日本呼吸器学会雑誌. 36(2). 144-149 (1998)