1997 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの麻酔薬感受性差と神経伝達物質及びその受容体の遺伝子発現との関連
Project/Area Number |
09877307
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Research Institution | Kagawa Medical School |
Principal Investigator |
小栗 顕二 香川医科大学, 医学部, 教授 (40079934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野萱 純子 香川医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (70263902)
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Keywords | 正向反射消失 / Tail flick反応消失 / 足底電気刺激逃避反応消失 / 痲酔薬感受性 / 黒質・線状体ドーパミン神経系 / 青斑核ノルアドレナリン神経細胞 / DNAアミノ酸配列 / 海馬AMPA型グルタメートレセプタサブユニット |
Research Abstract |
1)2系統のマウスのddNとC57BLについて正向反射の消失を指標とした痲酔感受性の比較ではエンフルランとイソフルランではddNはC57BLより抵抗性である。この関係は1955年にTail flick反応消失を指標として測定した結果と逆転したが、今回足底の電気刺激にからの逃避を指標として同時測定した結果は正向反射の消失と逆転せずddNの方が抵抗性であった。エンフルランでは有効痲酔濃度は2者の指標についてそれぞれBL雄1.24±0.041、1.52±0.048、雌1.33±0.071、1.6±0.062、ddN雄1.38±0.071、1.72±0.064、雌1.41±0.054、1.84±0.072。イソフルランではBL雄0.75±0.067、1.04±0.079、雌0.78±0.059、0.98±0.048、ddN雄0.85±0.055、1.17±0.064、雌0.95±0.046、1.24±0.056であった。 また、MSM系統の正向反射消失を指標とした痲酔薬感受性を測定した結果は2者の痲酔薬でエンフルラン、イソフルランそれぞれ雄0.96±0.057、0.55±0.027、雌0.94±0.042、0.51±0.048であった。この値はエルフルランではddNはMSMより約1.4倍、イソフルランでは約1.6倍の痲酔薬抵抗性を示していることになる。これらの感受性差は多因子遺伝であるので、白血球核DNAのアミノ酸配列の差がただちに遺伝因子の差と対応しないのが問題である。 2)ddN系、C57BL系およびそれらの交雑世代F1、F1'の系統雄性マウスについて以下のような脳の免疫組織化学の比較を行った。 (1)黒質-線状体ドーパミン神経系:ddN系はC57BL系より有意に細胞数が多く、交雑世代は親系統の中間に位置した。神経終末の分布する線状体は面積、染色性共にddNがC57BLを上回った。F1はC57BLと有意差はなく、F1'は親系統の間に位置した。 (2)青斑核のノルアドレナリン神経細胞:ddN系は他の3系統に比較して有意に細胞数が少なかった。ddNは正向反射消失ED50は他の3系統より有意に高く、Tail flick反応消失のそれは有意に低いことと線状体面積および染色性は濃厚な相関が推測される。 (3)AMPA型グルタメートレセプタサブユニット1、2/3の海馬内分布:GluRlCAlso、GluRlCAlsr、GluRlCAlslm、Glu2/3CAl、Glu2/3CA3の領域においてddN系とC57BL系の間に有意差があった。GluRlはCAL領域においてC57BL系に有意に多く、GluR2/3はCAl、CA3領域においてddN系に豊富であった。交雑世代については現在画像解析中である。GluR2/3はGluRlと異なり、interneuron荷は存在しないことがわかっている。過去においてわれわれがセロトニンとエンケファリンの海馬内分布を系統比較した結果と考えあわせると、これらの神経伝達物質および受容体の分布傾向は、全体として海馬の興奮性に系統差が存在することを推測させる。
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Research Products
(2 results)