1997 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔薬としてのキセノンの鎮痛作用に関する基礎研究
Project/Area Number |
09877310
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
後藤 隆久 帝京大学, 医学部, 講師 (00256075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 善規 帝京大学, 医学部, 講師 (60287018)
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Keywords | キセノン / 鎮痛作用 |
Research Abstract |
本研究は、動物モデルを用いてキセノンの鎮痛作用を検討する予定であったが、類似の研究が1997年(平成9年)10月に雑誌論文として発表され、その結果は、我々の仮説をほぼ支持するものだったため、次段階として予定していた、ヒトを対象としたものに研究計画を変更した。我々は、3年前より当施設の倫理委員会より認可を得て、キセノンを研究目的で臨床症例に用いている。 手術予定患者40名よりインフォームドコンセントを得たのち、イソフルラン1.5%、セボフルラン2.3%、またはキセノン70%+セボフルラン1.0%の全身麻酔下で手術を行った。皮切前後の血行動態および血中カテコラミンの変化を測定し、各麻酔薬の鎮痛効果の指標とした。 結果は、イソフルラン、セボフルランは皮切により血圧と脈拍がともに皮切前に比べ約30%上昇したが、キセノン群は、10%程度の上昇にとどまり、統計的に有意に皮切に対する反応が抑えられた。皮切等の組織侵害性侵襲に対する血行動態の反応は、イソフルランなど催眠を主な作用とする麻酔薬では抑えられず、麻薬による鎮痛を加えると効果的に抑制できることが報告されている。キセノンはこの点で、麻薬を加えたのと同様の効果を発現し、鎮痛効果が高いことが示唆された。なお、血中カテコラミンに対する作用は、三種の麻酔薬で差がなかった。 現在、鎮痛効果を持つことが確立されている亜酸化窒素とキセノンの比較を、この研究系で行っている。これとは別に、本年度我々は、聴覚誘発電位や脳波を用いて、キセノンが睡眠作用の点で亜酸化窒素よりはるかに強力で、イソフルランやセボフルランと類似していることを示した。来年度は、体性感覚誘発電位を用いて,キセノンの鎮痛作用について検討を加える予定である。
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