1998 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品適正使用を指向した診断マーカーとしての薬物代謝酵素の有用性に関する研究
Project/Area Number |
09877454
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
北田 光一 千葉大学, 医学部・附属病院, 教授 (90110345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 伊都子 千葉大学, 薬学部, 助手 (00202929)
大森 栄 千葉大学, 医学部・附属病院, 助教授 (70169069)
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Keywords | 薬物代謝酵素 / 腎障害 / GST |
Research Abstract |
本研究は、尿中漏出の薬物代謝酵素蛋白、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)が、腎障害時の早期診断マーカーとして臨床応用が可能か否かを判断することを目的として検討を行い、以下の知見を得た。 腎障害患者(腎硬化症、膜性腎症、IgA腎症、SLE、慢性腎症、糖尿病性腎症を含む72例)の尿中漏出GSTについて、GST-α(GST1-1、2-2、Yx)、GST-μ(GST3-3、4-4)、GST-πの抗体を用いたイムノブロット分析を行った。その結果、各分子種に相当する分子量をもつと推定される蛋白が、GST-α(GST1-1、2-2、Yx)については72例中58例に、GST-μ(GST3-3、4-4)については72例中59例に、GST-πについては72例中61例の患者尿中に見いだされた。また、各疾患別に尿中GST挙動を比較検討したが、各種腎疾患によるGST-α、μ、πの各分子種の挙動パターンに差異は認められなかった。さらに、一般的に腎機能検査に使用されているパラメータ(血中アルブミン濃度、血中クレアチニン濃度、総蛋白量、尿素窒素量)との比較を行った結果、各分子種の間に有意な相関関係は見いだされなかった。しかし、健常者と腎障害患者間の比較では、健常者での尿中GSTは全く検出されなかったのに対し、腎障害患者では各分子種においてほぼ全例に検出されていた。 以上の結果を考慮すると、健常者と腎障害患者との間で明らかな違いが見いだされたことから、さらに検討が必要であるが、中等度から重症の腎疾患というよりはむしろ、臨床検査データが変動する以前の初期の段階の腎障害時に、尿中漏出GSTが非侵襲的診断マーカーになる可能性があると考えられる。
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