Research Abstract |
1. 肝臓から逸脱したヒト肝アルギナーゼが白血球(おもに好中球)の細胞膜表百に結合する事実を初めて確認して以来,白血球からのアルギナーゼ結合蛋白の精製と,その生化学的性質の解明に向けて研究を進めてきた.その後,生化学的手法を駆使して,本結合蛋白を精製し,さらに抗体を用いてWestern blottingにより精製標品が本結合蛋白であることを確認した。その結果,本結合蛋白は約70kDaの分子量を有する蛋白質であることを,初めて明らかにすることができた(未発表)。現在,そのmRNAの発現の有無を確認することを目的として,本結合蛋白のN末端残基からのアミノ酸配列を明らかにするための研究を進めている。 一方,尿素回路を構成する酵素(アルギナーゼを含む)の血中における変動を調べるため,まずそれぞれの酵素に対するELISAを開発し,それを用いた検討結果を日本生化学大会において報告した(1998年)。 2. アルギナーゼは慢性肝疾患患者の血中に本酵素に対する自己抗体を有していることが明らかになっている。 しかし,その構成成分,病態に対する本自己抗体の臨床的意義はほとんど未詳であった。そこで,生体肝移植患者を例として,移植後産生される本自己抗体の種類,および血中の変動について検討した。その結果,本自己抗体はIgG(サブクラスを含む),IgM,IgAの成分から構成されていること,また,肝移植の成功例において,移植後本自己抗体の血中レベルが低下傾向を示すのに対して,死亡例では,高レベルを維持する傾向を示すことが明らかとなった。このように,移植肝の監視において,本自己抗体の血中レベルの推移を調べることは臨床的に意義があると考えられ.この成果を日本臨床化学学会で発表した(1998)。 3. 我々は心筋細胞の死と心臓の血管再生においてacidic fibroblast growth factor(aFGF)および一酸化窒素(NO)が直接的,間接的に関係しているとの仮説のもとに研究を進めている。これはNOがL-アルギニンからNO合成酵素によって合成されること,またアルギナーゼも同アミノ酸を共通の基質とすることから,なんらかの制御網を形成している可能性があるからである。まず各種の心疾患におけるaFGFの変動を調べるために,我々はaFGFに対する測定系(ELISA)の開発を試み,成功した(Clin Chim Acta,1999,in press)。
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