1998 Fiscal Year Annual Research Report
唯識説からみた病気への「とらわれ」と「気づき」の心理学的特性に関する基礎研究
Project/Area Number |
09877471
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
富岡 詔子 信州大学, 医療技術短期大学部, 教授 (10164013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 しげ子 信州大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (90126863)
佐藤 陽子 信州大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (60170792)
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Keywords | 障害受容 / 「とらわれ」 / 「気づき」 / 仏教心理学 / 心身一元論 |
Research Abstract |
研究計画2年目は概念モデル構築の基本的な立場の明確化に重点をおいた. 1. 障害をもつ子どもの両親あるいは障害をもつ成人自身によって書かれた回顧的あるいは自伝的な出版物に見られる病気や障害に対する記述内容を検討した.病気や障害は,それ自体を独立して抽出できる体験ではなく,(1)あくまでも生活の一部として体験されていること,(2)他者との具体的な出会いや交流が様々な生活体験を肯定的にも否定的にも影響しうること,(3)生活体験自体は医学のもつ心身二元論的な立場ではなく,仏教心理学のもつ心身一元論的な立場で語られていること,の3点を確認した.これらは,当事者が体験を物語る時の基本的な立場であり,モデル構築の一つの主軸となることが判明した. 2. リハビリテーションの領域で通説的に記述されている「障害受容」過程の背後にある概念モデルの明確化と,利用されている実証的な方法論とを整理した.障害受容は,(1)価値体系の転換過程,(2)受傷に対する段階的な心理的反応過程,(3)行動の学習過程,であるとみなす3種類の立場に分類された.方法論的には,(1)障害受容の影響要因の抽出と各要因間の関連性を検討する調査(記入式アンケート調査,面接による聞き取り調査),(2)障害受容を質的に評価する尺度の開発,(3)援助過程と関連づけた事例研究法が主として用いられていた. 3. 前年度の試行的インタビューの結果から明らかになった,調査や面接自体が自己啓発的な機会になるような工夫を加味し,1で挙げた3つの視点を主軸とする背景基礎調査用紙と自己記入式質問紙法の第一試案を作成した.
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