明治期における地域スポーツ組織の成立過程-北海道のボ-トクラブを中心に

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09878014
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 鈴木 敏夫 北海道大学, 教育学部, 教授 (80001824)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 大沼 義彦 北海道大学, 教育学部, 講師 (70213808)
• Keywords: 近代スポーツ / 社会体育組織 / ボ-トクラブ

Research Abstract

わが国における近代スポーツの展開上、重要な意義を有すると思われる地域社会における社会体育(スポーツ)組織の成立過程を明らかにする為に、明治期の北海道におけるボ-ト倶楽部(端艇会)の成立過程及び活動実態に関する資料調査を行った。
近代スポーツの成立期において、ボ-トはベースベールと共に最も早くから高等教育機関を中心に、学生のスポーツとして普及したが、一方ではそれが地域スポーツ組織の成立に寄与したことを見逃すことは出来ない。ベースボールに先んじて何故ボ-トが地域スポーツ組織として定立し得たか。この解明は、近代日本の社会体育(スポーツ)政策の成立を構造的に把握する上で重要である。
今回の資料調査は、札幌・函館・小樽・室蘭・釧路・旭川など主要都市を対象とした。関連資料の蒐集は、市立図書館・北海道立図書館・国会図書館・北海道大学図書館・北海道教育大学図書館ならびに各市体育協会での聞き取りによって進められた。北海道における地域スポーツ組織の嚆矢は、明治29年に設立された「函館端艇会」と「北海道端艇会」である。前者は函館地区、後者は札幌・小樽地区住民の漕艇愛好者による会員制倶楽部であった。組織上の相互依存性は認められず、独自に発案されたボ-ト組織であり、その加入に際してはいかなる社会的出自をも問わず、かつ定額の会費を払えば誰でも会員資格を得ることが出来た。かかる民主的な組織原則を採用したという意味で、両会は文字通り近代的な地域スポーツ組織と認められる。引き続き函館端艇会、北海道端艇会の組織化の経緯及びその活動実態についての実証的解明を行う。