1997 Fiscal Year Annual Research Report
日記文の指導についての歴史的研究(明治元年〜7年)
Project/Area Number |
09878049
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Research Institution | Hiroshima Bunkyo Women's University |
Principal Investigator |
岡 利道 広島文教女子大学, 助教授 (80279075)
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Keywords | 短文表現 / 達意の文章 / 叙事文 |
Research Abstract |
平成9年度の次子結果は,以下のとおりである。 明治元年より5年までに刊行された読本や文法・漢文・作文・習字関係書の文献調査,及びそれらの分析・検討のおおよそを行った。調査対象文献数は24県であった。現在までのところ,日記文の指導に直接つながるような記述は見つかっていない。が,明治中期から後期にかけて頻出する日記文作法論を産むところの前提となる事情は,いくつか見出すことができた。紙幅の都合により,ここでは,以下の二書に焦点を当てながら,本年度の研究成果の要点報告としたい。 まず,漢作文作法書である『作文便覧』(山田右兵衛著・明治4年刊)に注目する。美辞麗句集的性格をもっていることは,これまでにも指摘されてきた。一まとまりの短いセンテンスが多数収められていることから,私は文意識を涵養する・短く言い切る(短文表現の)くせをつけるという同書の意義を強調したい。 次に,書簡文作法書である『童蒙必携開化文章』(〓堂主人著・明治5年刊)に注目する。高度な内容・形式が多数入っており,幼い児童によっては無理も多かったであろうが,明快・達意の文章を指向しているという面で同書を評価できると考える。 両書に共通することは,叙景的という意味がやや含まれるものの,.叙事的文体の習熟という面で意義があることである。そのような書き方・述べ方をする中で情をにじませる,あるいはにじんでくるという方向が目ざされたと捉えたい。はじめから叙情的な内容を目ざして文章を書くのではなく,このような基本的文章制作態度が重んじられていたことは,自己の記録としての日記を書くという態度に通ずるものがあると考える。
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