1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09878059
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小林 聡 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (50251707)
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Keywords | DNA計算 / 分子計算機 / 並列計算 |
Research Abstract |
現在の並列計算機は、既存の逐次処理型のCPUを多数相互結合することにより、並列計算を実行するものがほとんどであるが、数百から数千のプロセッサ数を越えると、そのネットワーク構造の複雑性等の問題から限界が生じるのは明白である。このようなプロセッサ数の壁を破るための一つの方向として、本研究では1つのDNA「分子」をプロセッサとして利用する計算機構を提案し、その可能性を論じるための基礎実験を行なった。具体的には、命題論理系の導出過程を並列に実現するための生物学的実験手続きを考案した。本手法では、与えられた命題論理系のfactとruleがそれぞれ異なるタイプのDNA配列にコード化され、ruleはその条件部に現れるfactを塩基相補性に基づいて認識し、結論部のfact(DNA配列)を新たに生成する。その際に、基礎的な遺伝子操作実験技術が利用される。本手法の可能性を確認するため、基礎的な分子生物学実験を行なったが、その際に、以下のような実際的な問題点が存在することが判明した。それは、新しいfactを制限酵素により切り出す際に、長さ4から5という非常に短い認識配列部分のハイブリダイゼーションだけでかなりの量の切り出しが行なわれてしまうという予想外の結果であった。この問題点は、分子間、分子内の認識部位同士による構造の生成を避けることにより取り除くことができる。そこで、(1)ストレプアビジンビーズによる分子の固定と、(2)異なる認識部位を持つ2種類の制限酵素の利用という2つの方法を組み込むことにより、分子間、分子内の干渉による構造の生成を抑止する方法を提案した。そして、その有効性の確認実験を進めるたが、分子の固定を行なっても制限酵素による切り出しが行なわれるための実験条件の確認等の基礎的な実験成果が得られた。今後は、このような分子生物学実験による有効性の確認とともに、計算モデルとその可能性の理論に関する研究を進めて行く予定である。
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