1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09878144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片岡 幹雄 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30150254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 修一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10112004)
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Keywords | 蛋白質動力学 / 中性子非弾性散乱 / 基準振動解析 / 光カー効果 / 複雑化の緩和現象 / 動力学の調和性と非調和性 / チタン・サファイアレザー |
Research Abstract |
理論計算により、蛋白質の機能発現における低エネルギーの協同的な振動モード及び非調和的な運動モードの重要性が指摘されてきている。こうした蛋白質の動力学的性質を実験的に調べることは困難であった。本研究では、中性子非弾性・準弾性散乱及び新しい光散乱測定技術による蛋白質の低エネルギー動力学の実験的研究の展開をめざした。 黄色ブドウ球菌の核酸分解酵素を用いて、室温及び25Kの非弾性中性子散乱スペクトルを広いエネルギー範囲で観測した。蛋白質の非弾性散乱スペクトルとしては、これまで報告されている中で、最高精度のデータを得ることができた。得られたスペクトルを、基準振動解析の結果と比較した。定性的には両者の一致は良く、観測されたピークを帰属することが可能であった。しかし、ピーク位置のシフトが見られるなど一致は完全ではなく、特に強度の不一致が著しかった。この結果は、理論計算に用いられているポテンシャル関数に改善の余地のあることを指摘するものである。 光を用いたダイナミクスの測定は試料に非接触でかつ測定される時間領域が広いことでさまざまな不規則系の測定に用いられてきたが、蛋白質については、低振動数領域でのダイナミクスの測定はきわめて困難でほとんどされていなかった。今回、チタン:サファイアレーザーの再生増幅器から得られる100fsの時間幅をもつ高繰り返しの光パスルを用いた光カー効果の測定により、初めてそのダイナミクスを観測することができた。用いた試料はコラーゲンを加水分解して得られるゼラチンの水溶液と単純蛋白質のアルブミンの水溶液で、蛋白質のネットワークに基づくと思われるps領域での遅い緩和過程が測定された。今後実験条件と測定できる時間領域を広げることで階層的な揺らぎに関して多くの情報が得られると期待される。
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[Publications] L.S.Brown: "Global shift of protein structure triggered by local electrostatic change in bacteriorhodopsin" Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94. 5040-5044 (1997)
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[Publications] A.V.Goupil-Lamy: "High-resolition vibrational spectroscopy of a globular protein:Inelasric neutron scattering and normal mode analysis oh staphylococcal nuclease" J.Amer.Chem.Soc.119. 9268-9272 (1997)
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[Publications] J.C.Smith: "Motions in Native and Denatured Proteins" Physica B. 印刷中. (1998)
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[Publications] 木下修一: "超短光パルスによる低振動数モードの測定" 日本結晶学会誌. 39. 179-187 (1997)
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[Publications] 有吉哲夫: "10フェムト秒チタンサファイアレーザーの製作と超高速緩和現象の測定" 分光研究. 46. 196-205 (1997)
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[Publications] 木下修一: "フェムト秒光カー効果と高分子解能光散乱法による低振動数モードの測定" 生産と技術. 49. 39-41 (1997)
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[Publications] 中村春木: "蛋白質のかたちと物性" 共立出版, 234 (1997)