1997 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜という不均一かつ分子運動が拘束された反応の場における酵素反応論の確立
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09878156
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石橋 輝雄 北海道大学, 医学部, 教授 (60001872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 秀昭 北海道大学, 医学部, 助手 (40198487)
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Keywords | 側方拡散 / Arrheniusプロット / ミクロソーム膜 / 時間分解蛍光偏光解消法 / ラソステロール5-不飽和化反応 / コレステロール / 相転移 / 脂溶性基質 |
Research Abstract |
膜酵素の活性はしばしば脂質二重層の組成や動態に強く影響を受ける。この様な膜機能を理解するためには二重層の動的微細構造を詳細に解析しなければならない。 本研究では先ずリン脂質二重層でのコレステロールの分子運動を、その蛍光アナログであるデヒドロエルゴステロール(DHE)を用いてピコ秒パルスレーザーによる時間分解蛍光偏光解消法により解析した。分子運動の指標として揺動拡散速度(Dw)と揺動角(θc)を円錐内揺動運動モデル(wobbling in cone model)を適用して測定した。 その結果、液晶(La)二重層構造と非二重層構造の逆ヘキサゴナル相(H_<II>)の混在状態でのDHEの分子運動はそれらの単独の相より活発になっており、La-H_<II>相の移行過程で、コレステロール分子は運動によりその位置を変化させ、逆ミセル構造を安定化させることが明らかとなった。 また膜内での酵素反応の一つとして、肝ミクロソームにおけるコレステロール合成の一ステップである、ラソステロールを7-デヒドロコレステロールに変換するラソステロール5-不飽和化反応をモデルとして設定した。その結果、本不飽和化反応は初期の迅速なバースト相とその後の緩徐な定常相の二相性となることが明らかとなった。後期の定常相は基質ラソステロールの膜内での拡散速度が反応を律速することが予測されるが、そのことは本酵素反応のArrheniusプロットをとると、バースト相は直線となるが、定常相は折れ線となることからも支持された。 さらに低濃度のデオキシコール酸処理によりミクロソーム膜の構築を乱すと初期バースト相も直線から折れ線に変化し、これらの事実は酵素と基質の相互作用が膜内での側方拡散により律速されることを示している。
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[Publications] Nishino,H., Nakaya,J., Nishi,S., Kurosawa,T. and Ishibashi,T.: "Temperature-induced differential kinetic properties between an initial burst and the following steady state in membrane-bound enzymes:Studies on lathosterol 5-desaturase." Arch.Biochem.Biophys.339・2. 298-304 (1997)