1998 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡熱力学による複雑系としての集積ナノアクチュエータの設計研究
Project/Area Number |
09878207
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
藤正 巖 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (30010028)
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Keywords | ナノアクチュエータ / 人工筋肉 / 非平衡系 / 場のエネルギー / 非平衡熱力学 / 自己組織化 / エネルギー変換 / 熱搖動 |
Research Abstract |
この研究は,生物の筋肉のような,効率の良い,柔らかい,小型のアクチュエータを開発するための基礎理論と,設計手法を考えることにある.2年間の研究の研究の過程では,生物のエンジンといわれる筋肉が,単純な化学反応の結果として生じる分子構造の変化で収縮を起こしているのとするだけでは説明のつかない機構を含んでいることが明らかとなった.この過程は,多くの筋肉収縮の分子論的解明を行っている研究者の実験結果からも立証され始めているようにみえる.従って,化学反応でない純粋に力学的過程から作られる分子エンジンの設計が可能であることになる.私が主張する新しい分子エンジンの設計の基盤は,分子が熱揺動をうけるような中間領域で作られるエネルギー変換系は,この系が存在する空間が開放系で,非平衡状態にある熱力学的環境にあることが重要である.そこでは,変換すべきエネルギー源として,フラックスとして流れている場のエネルギーを使用する,従来のマクロの世界のアクチュエータとこの分子論的アクチュエータの挙動の根本的な違いは,エネルギー入力に対して出力のあいまいさがあることであり,エネルギー変換の仕組みの基本は,熱束の中で,非対称な場のエネルギー獲得可能な分子素子が,分子間衝突のような純粋に物理学的な現象でおこる運動を制止している構造自体にあり,僅かな分子変化でその構造が崩れれば,一方方向の運動が生ずることに起因していると考えられる.エネルギー変換は,時間軸に対して個々にランダムな事象として起こり,かつ多数の素子の挙動に関しては,自己組織化が起こることも,このエンジンの特色である.このような課題を解くための方法論として,手始めに既に開発済みの分子衝突モデルを利用し,非平衡熱力学の理論をシステムに適用した.
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[Publications] 藤正 巖・松浦宏幸: "メゾスコピック世界におけるゆらぎ" ゆらぎの科学. 7. 31-91 (1998)
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[Publications] 藤正 巖: "機械としての生物、ひと、そして社会" 医用電子と生体工学. 35(特別号). 57-58 (1997)
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[Publications] 藤正 巖: "生体機能の機械的設計" 生化学若い研究者の会法. (予定). (1999)