1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09CE1001
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
安田 喜憲 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (50093828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 浩之 国際日本文化研究センター, 研究部, 助手 (00234245)
福澤 仁之 東京都立大学, 大学院理学研究科, 助教授 (80208933)
外山 秀一 皇學館大学, 文学部助教授, 助教授 (50247756)
高橋 学 立命館大学, 文学部, 教授 (80236322)
佐藤 洋一郎 静岡大学, 農学部, 教授 (20145113)
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Keywords | 長江文明 / 環境考古学 / 稲作の起源 / 稲作文明 / DNA分析 / 青銅器文化 / 小板橋遺跡 / 城頭山遺跡 |
Research Abstract |
1) 長江中流域湖南省城頭山遺跡の考古学的発掘調査と環境考古学的研究 平成10年10月-12月の間、湖南省文物考古研究所と共同で、湖南省〓県城頭山遺跡の日中共同学術調査を実施した。城頭山遺跡の航空測量により、城頭山遺跡が完璧な円形の城壁に囲まれた美しい都市遺跡であることが明らかとなった。城壁の外からは大渓文化に属する遺物が発見され、大渓文化の東側の城門に近接して、20m四方、高さ2mの土壌が発見された。その土壌のすそのからは土廣墓が、頂部からは石柱と木柱痕が発見された。長江流域の城壁で囲まれた都市のシンボルとして、この土壇はきわめて重要な意味を持ったことが明らかとなった。 2) 湖南省〓陽平原の環境考古学的研究 城頭山遺跡の学術調査と併行して、城頭山遺跡が立地する〓陽平原の環境考古学的調査を実施した。〓陽平原には最古の稲作遺跡である影頭山遺跡と八十〓当遺跡が立地する。この最古の稲作遺跡の環境考古学的調査を実施した。この〓陽平原の環境考古学的調査によって、最古の稲作がいったいいつ頃いかなる環境のもとで始まったかについて、明確な解答を出すことができる見通しが得られた。 3) 長江上流域雲南省石寨山遺跡・小板橋遺跡の環境考古学的研究 平成10年9月と11月-12月にかけて長江上流域雲南省大理市〓海と昆明市〓池、〓仙湖の水深20〜100mの湖底にボーリングを実施し、雲南省の環境復元のための堆積物を採取し日本に持ち帰って各種分析を実施中である。これらの調査により雲南省における稲作の起源の解明とともに、そこに存在した青銅器文化の巨大な王国〓王国の実態の解明とその興亡を環境変動のかかわりにおいて解明できる見通しがえられた。 4) 長江下流域江蘇省草鞋山遺跡、龍南遺跡の環境考古学的研究 平成10年12月に、江蘇省農業科学院糧食作物研究所と共同で、江蘇省草鞋山遺跡と龍南遺跡の環境考古学的調査と微山湖と駱馬湖周辺のポーリング調査を実施した。トレンチから採取した堆積物は日本に持ち帰りDNA分析やプラントオパール・花粉などの各種の分析を実施中である。これらの分析により日本列島への稲作の伝播について新たな知見が得られるものと期待される。 5) 河北省南庄頭遺跡・虎頭領遺跡の環境考古学的研究 平成10年9月-12月の間、河北省文物考古研究所との共同で、河北省南庄頭遺跡の考古学的発掘調査と環境考古学的調査、虎頭領遺跡の環境考古学的調査を実施した。その結果9,000年前にはナラとマツの混交林が存在し、その中で農耕が開始されていたこと。8,500年前には周辺の森がほとんど破壊しつくされていたことなど、注目すべき事実が明らかとなりつつある。 6) 中国東北部遼寧省査海遺跡と内モンゴル自治区大甸子遺跡の環境考古学的研究 照葉樹林帯に位置する長江文明の性格をより明らかにするために、中国東北部の麦作のナラ林帯の環境考古学的調査研究を平成10年6月に実施した。その調査分析の結果、現在ではカラマツやポプラの植林しかみられない遼寧平原にはかって、落葉ナラ林が広く存在したことが明らかとなった。また査海遺跡では6,000年前にはすでにアワの栽培が行われていた可能性が高いことをつきとめた。大甸子遺跡のレス堆積物の分析と年代測定の結果、3,600年前には気候が現在より温暖でモンスーンが活発となり、内モンゴルの乾燥地帯が、現在より湿潤で森の多い環境にあったことが明らかとなった。 7) インダス分明・朝鮮文明との比較調査研究 長江文明と他文明の比較調査研究として、平成10年度はインダス文明と朝鮮文明との比較調査研究を実施した。インダス文明と長江文明との比較研究のために日本学術振興会の特別研究員としてアラハバード博物館学芸員 S.グプタ博士を招へいした。また1998年5月には稲作の伝播と朝鮮文明と長江文明の比較調査研究のために、韓国済州島の環境考古学的研究を実施した。 8) 印刷物の刊行 長江文明研究プロジェクトの研究成果として平成10年度はニュースレター「Environment andCivilization-Newsletter of the Yangtze River Civilization Project(YRCP)No.2]の印刷物を刊行した。
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Research Products
(18 results)
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[Publications] H.Fukusawa et al.: "High resolution multi-proxy recrods of Asian monsoon activities from verved lake loess-paleosol sediments over last 75,000 years." Proc.Intern.symp.Oinghai-Tibetan plateau 1998. in press.
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[Publications] H.Fukusawa et al.: "Asian summer monsoon instability during the past 60,000 years:magnetic susceotibility and pedogenic ecidence from the western Chenese western Loess Plateau." Earth Planet.Sci.Lett.in press.
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[Publications] 福澤仁之: "湖沼・内湾・レス堆積物を用いた東アジアにおける気候変動の高精度復元と人類史の関係" 気象研究ノート. 35. 59-72 (1998)
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[Publications] 福澤仁之ほか: "堆積物による過去75,000年間のアジアモンスーン変動の高精度復元" 地学雑誌. 107・4. 566-571 (1998)
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[Publications] H.Fukusawa et al.: "High resolution pedogenic and rock magnetic records of Asian summer monsoon instability during the past 60,000years from the Chinese Westeren Platesu." PAGES News Letter. 6・1. 7-8 (1999)
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[Publications] 福澤仁之 ほか: "中国レス堆積物のIRSL年代測定" 国立歴史門続博物館研究報告. 特別号. 63-73 (1998)
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[Publications] 松井 章: "「松ヶ崎遺跡出土の動植物遺存体」" 京都府遺跡調査概報 第82冊-1 [松ヶ崎遺跡第5次発掘調査概要」. 20-22 (1998)
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[Publications] 松井 章: "「古代における動物利用の研究」" 奈良国立文化財研究所 年報1998. 33 (1998)
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[Publications] 松井 章: "「古代都城と水の流れ」" 京都大学 「人・環フォーラム」. No.5. 24-27 (1998)
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[Publications] 光谷 拓実: "箱根芦ノ湖の湖底木と南関東の巨大地震" 奈良国立文化財研究所 年報1998-I. 36-37 (1998)
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[Publications] 光谷 拓実: "年輪から過去を探る" 日本文化財科学会設立15周年記念公開講座「それは何年前のこと?」. 25-41 (1998)
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[Publications] 光谷 拓実: "狭山池出土木樋の年輪年代" 狭山池 埋蔵文化財編(狭山池調査事務所編). 470-471 (1998)
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[Publications] 光谷 拓実: "年輪年代法" ゆらぎの科学. 8. 133-176 (1998)
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[Publications] Takayasu Koezuka,Kazuo Yamasaki: "Investigation of Some K2O-PbO-SiO2 Glass Excavaited in Japan." Proceedings of 18th International Congress on Galass. BO3. (1998)
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[Publications] Nobuhiko Kitano,Takayasu Koezuka: "Experiments for the Production of the Red Pigments Used in the Archaeological Urushi Objects." International Council of Museum-Commuttee for Conservation.International Coference on Conservation of Wet Organic Archaeological Materials. (1998)
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[Publications] 肥塚 隆保: "浜松市出土ガラス遺物の科学的調査" 宇藤坂古墳群(浜松市文化協会). 90-94 (1998)
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[Publications] 肥塚 隆保: "磯辺王塚古墳出土ガラス製品の自然科学的調査" 磯辺王塚古墳(豊橋市埋蔵文化財調査報告書). 43集. 103-114 (1998)
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[Publications] 松井 章・ほか著(小林達雄監修): "縄文時代の考古学" 学生社, 305 (1998)