2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09F09028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 明 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RUGGIERI Marco 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | QCD / 相図 / カイラル相転移 / 非閉じ込め相転移 / 強磁場 / トポロジカル励起 / 相対論的重イオン衝突 / 3重臨界点 |
Research Abstract |
強い相互作用するクォーク・グルーオン物質の相図について、特に強磁場とカイラル化学ポテンシャルの及ぼす効果を調べた。相対論的重イオン衝突実験において、非中心衝突の場合、非常に強い磁場が生成されることが知られている。衝突初期において、その強さは、中性子星表面磁場の10~100万倍に達する。このような強い磁場中では、クォークのスピンが揃うため、もしクォークが右巻きあるいは左巻きのカイラリティを持っているとすると、運動量の向きが一意的に決まってしまう。そのため、インスタントンやスファレロンといったトポロジカルな励起によって、クォーク・グルーオン物質中に有限のカイラリティのバランスが崩れると、全体の運動量のバランスも崩れるため、磁場と並行に電流が流れることになる。このような効果を「カイラル磁気効果」と呼び、最近、実験的に大きな関心を集めている。有限カイラリティの効果は、カイラル化学ポテンシャルを導入することで、理論的に記述できる。そこで本研究では、QCD相図に及ぼす磁場とカイラル化学ポテンシャルの効果を、非閉じ込め相転移を取り入れたカイラル有効模型を用いて調べ、興味深い結果を得た。即ち、カイラル相転移は、カイラル化学ポテンシャルが大きくなると、1次相転移になる可能性が高く、従って、1次相転移線の端点に3重臨界点(tricricial point)が存在する。カイラル化学ポテンシャルは、いわゆる符号問題を引き起こさないため、原理的にモンテカルロシミュレーションで検証可能な予言である。もしも将来、本研究で予言された臨界点の存在が確認できれば、有限密度方向に存在すると信じられている別の臨界点の性質を理解するうえでも有用な情報が得られることだろう。
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