2011 Fiscal Year Annual Research Report
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09F09238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山内 薫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LOTSTEDT ErikV. 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 数値シミュレーション / 強光子場 / レーザーと分子の相互作用 / 古典モデル / 時間依存的ハートリー・フォック方程式 |
Research Abstract |
今年度も引き続き、二つのテーマで研究を行った。昨年度から始めた第1のテーマは、強光子場における分子ダイナミクスを古典力学によって記述することである。この方法によって、高強度の数サイクルレーザーパルスとH_3^+分子の相互作用のモデルを構築し、実験で得られた運動エネルギースペクトルの定性的特徴を再現することに成功した。我々は、このようなモデルを、他の方法ではシミュレーションできない大きな分子に適用することが可能であると考えている。我々の研究の結果はPhysical Review Letters誌に掲載され、それに続く成果を学術ジャーナルに投稿中である。 第2の研究は、実験で見られた、強レーザーパルスに曝された炭化水素分子の高電荷状態について説明することを目的とした。目的達成のため、我々はサイズの小さいアセチレン分子の一次元モデルを用いることにした。いくつかの炭素と水素原子間の距離について時間依存的ハートリー・フォック方程式を解くことにより、炭素-水素原子間の距離が平衡距離の2倍に引き伸ばされたとき、イオン化する確率が大幅に増強されることを示すことができた。これは、実験結果とも一致するものである。我々の計算では、最大6個の電子が放出されることが示された。このような増強イオン化のメカニズムは、電子軌道が空間的に局在することに起因する。 この研究結果についての論文は、Physical Review AのRapid Communicationに受理され、ウェブで公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の研究テーマにおいては、実験で得られた結果の定性的な特徴であるが、再現する古典モデルを構築できた。 第2の研究では、当初の目標である炭化水素分子の一次元モデルでのシミュレーションには成功したが、三次元モデルへの発展、ハートリー・フォック近似計算の改良などいくつかの課題が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、レーザー分子の相互作用に関する研究に係わることになれば、多配置時間依存的ハートリー・フォック法の理論と応用について学びたい。研究を重ねれば、多電子多原子分子の量子反応のシミュレーションが可能になると考えている。この方法を実用化するには、電子交換演算子をいかに用いるか、また、複数の計算機でパラレルに計算を行うのに適したコンピューターコードを構築することが重要である。
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Research Products
(7 results)