2009 Fiscal Year Annual Research Report
視覚信号の時空間的相互作用を考慮した視覚運動情報処理の心理物理学的解明
Project/Area Number |
09J00134
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹村 浩昌 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 視覚 / 視覚運動 / 錯視 / 心理物理学 / 神経回路モデル / 計算論的神経科学 |
Research Abstract |
1.視覚信号の時空間的相互作用が運動検出感度に与える影響の心理物理学的解明 視覚信号の時空間的相互作用が運動検出感度に与える影響について、心理物理学的検討を行った。実験は、視覚信号の空間的あるいは時間的相互作用によって生じる錯覚運動成分が、それとは直交する運動の検出成績に与える影響を調べるという形で行われた。結果、直交する錯覚運動が運動検出成績を向上させるという結果が得られた。このことは、視覚刺激自体の物理的特性を変えることなく、従来得られていたよりも良いヒトの運動検出成績を実現できたことを意味する。また、それ自体は単独では検出できない弱い信号でも、他の信号との時空間的相互作用によって検出可能となることが明らかになった。このことから、ヒトの視覚系においては、通常は知覚にのぼらない局所的情報が多く保持されており、錯覚運動を用いた特殊な条件において、それらの情報を意識的に取り出すことができるということが示唆される。 2.視覚信号の時空間的相互作用による運動検出感度の向上を説明する神経回路モデルの構築 理論神経科学の専門家である東京大学新領域創成科学研究科の岡田真人教授・田嶋達裕氏と共同研究を行い、先行研究における神経生理データに基づき、視覚信号の時空間的相互作用によって生じる検出感度の向上を説明する神経回路モデルを構築した。視覚運動情報処理の中枢であるMT野のニューロン活動をモデル化し、視覚運動情報の空間的相互作用がもたらす神経活動の抑制パターンなどを考慮したモデルの提案を行った。結果、提案されたモデルに基づくシミュレーションによって、心理物理実験で見られた運動検出感度の向上が再現できた。生理学的に妥当な数理モデルを提案することによって、将来の神経生理学研究の結果を予測できるほか、検出感度の向上を実現するアルゴリズムを他の分野(コンピュータビジョン)などに応用することが期待できる。
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