Research Abstract |
本研究の主な目的は,非等方性多孔質体理論を用いて,複雑なバイオ伝熱系を取り扱い得る一般的解析手法を確立することにある.まず,非等方性多孔質体理論における解析手法を確立ための基礎研究としては,2つの異なるスケールを有する構造体をもつ二重構造多孔質体を考えた.解析的アプローチより,二重構造多孔質体の巨視的モデル定数である有効透過率(A simple mathematical model for determining the equivalent permeability of fractured porous media, INTERNATIONAL COMMUNICATIONS IN HEAT AND MASS TRANSFER, Liu JJ, Sano Y, Nakayama A, Vol.36, pp220-224, 2009)を提案した.また,二重構造多孔質体における流動実験を行い,本数学モデルの妥当性の検討を行った.(An Experimental Investigation into the Effective Permeability of Porous Media whose Matrices are Composed of Obstacles of Different Sizes, Open Transport Phenomena Journal, Sano Y, Noguchi K, T.Kuroiwa T, Vol.1, pp.15-19, 2009) 次に,気道から肺胞までを肺胞における酸素および二酸化炭素のガス交換も含めて,呼吸器内の流動および物質移動現象を数学的にモデル化(Why do we have a bronchial tree with 23 levels of bifurcation?, HEAT AND MASS TRANSFER, Nakayama A, Kuwahara F, Sano Y, Vol.45, pp.351-354, 2009)することにより,肺における分岐が23分岐になることが最適であることが判明した.また,3分岐以降23分岐に至る分岐網を,非等方性多孔質体理論に基づきモデル化し,肺における呼吸器系のメカニズム(A Porous Media Approach for Bifurcating Flow and Mass Transfer in a Human Lung, JOURNAL OF HEAT TRANSFER-TRANSACTIONS OF THE ASME, Kuwahara F, Sano Y, Liu JJ, Nakayama A, Vol.131, 2009)を明らかにした. さらに,生体伝熱を考えた.非等方性多孔質体理論に基づき,生体内の血流の流れ,血流や組織間の熱移動および物質移動を司る巨視的支配方程式群を導出した.本研究を通し,非等方性多孔質体理論を用いて,複雑なバイオ伝熱系を取り扱い得る一般的解析手法を確立することにより,凍結壊死療法や温熱治療などの医学に大きく貢献できるものと考えられる.
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