2010 Fiscal Year Annual Research Report
モラルの起源―霊長類における高次感情に関する実験的分析―
Project/Area Number |
09J00264
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀧本 彩加 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | モラル / 高次感情 / 報酬分配 / フサオマキザル / 他者への配慮 / 血縁関係 / 子ども個体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、モラルの進化的起源を解明することである。フサオマキザルは、報酬分配場面において、「不公平感」や他者への「配慮」といったモラルを支える重要な高次感情を示すことで知られる。そこで、彼らを対象に、高次感情の生起・制御に影響する要因について検討する(計画1)ため、本年度の研究では、被分配者として子ども2個体(1歳メス)を用いて、(1)被分配者が子どもであること・(2)子どもとの血縁関係・(3)子どもの成育歴(mother-raised/human raised)が、報酬分配場面におけるフサオマキザルの他者への「配慮」に影響するか、を検討した。分配者は被分配者と対面しており、その間に2つの餌箱を設置した。分配者は餌箱を選択・操作して報酬を得たが、被分配者は何も作業をせず、報酬を得た。分配者は、自身の選択によらず同じ報酬を得たが、被分配者の得られる報酬は分配者の選択により異なった。順位テストにより、子ども2個体が分配者の大人6個体よりも劣位であることは確認した。試行を繰り返した結果、分配者6個体のうち1個体(最優位のオス)のみが、子ども2個体のうちの1個体(血縁関係にない人工飼育の子ども)に対して、被分配者がいないときに比べて、有意に多く価値の高い報酬がわたる餌箱を選択した。つまり、自身の報酬が保障されているにかもかかわらず、ほとんどすべての分配者個体が、子ども個体に対して、自身との血縁関係やその成育歴にかかわらず、「配慮」を示すことはなかったのである。子ども個体は、やや控えめだが、大人個体と同様、価値の高い報酬に手を伸ばすなどして催促していたし、価値の低い報酬を与えられた際には抗議行動も示していたが、それらの行動は分配者の選択に明らかな影響を及ぼさなかった。大人個体同士のやりとりにおいてのみ、他者への「配慮」が発揮される理由については、今後、詳細に検討していくべきである。
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Research Products
(8 results)