2010 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系外惑星の直接検出に向けた宇宙望遠鏡搭載中間赤外線コロナグラフの開発
Project/Area Number |
09J00310
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
櫨 香奈恵 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光学赤外線天文学 / 系外惑星直接観測 / コロナグラフ |
Research Abstract |
私は太陽系外惑星の直接観測という重要で挑戦的なゴールを目指しており、そのために赤外線宇宙望遠鏡SPICAに搭載することを想定した、「バイナリ瞳マスクコロナグラフ」という高コントラスト観測蔵置の原理検証実験を行なっている。これまで単色レーザー光源による原理検証実験に留まっていた実験を、世界で初めて広帯域・多波長域化することに成功し、原理的には波長によらず機能するという瞳マスクコロナグラフの利点を実証した。これは最終的に装置を衛星搭載望遠鏡にとりつけて系外惑星を観測するために不可欠のマイルストーンである。また、コロナグラフ観測装置の性能を大きく向上させる星像差分法の実証、実験を行なった。光学系の熱歪みを従来よりも低減することに成功した結果、星像差分法を使用した後の中心光とその周りの暗領域(惑星光が検出できるほど中心の光を低減させた領域)のコントラストは差分前のコントラストより2桁も改善され、世界最高レベルである1.8×10^<-9>に到達した。これらの可視光原理検証実験の成果をまとめ、2本目の査読論文を投稿し、国内外の研究会でも発表した。 さらに実証実験をこれまでの可視光波長域から(より惑星観測に適した)赤外波長域に拡張するための極低温実験チャンバーおよび赤外線用バイナリ瞳マスクの開発でも進捗を得た。熱輻射による赤外バックグラウンドを大幅に低減するために、具体的にはチャンバー内部にはワークサーフェスとラディエーションシールド(2重)を設置し、これらに断熱材を張り付け、放射による熱流入を抑えた環境を実現し、機械式GM冷凍機(住友重機製SRD208)を2台利用することで液体ヘリウムなどの冷媒を用いることなく冷却した。冷却試験を行なった結果、実験系全体を設置する場所の温度が目標温度である10K以下に到達した。また赤外線実験用に、基盤を用いない金属薄板による自立型のマスクおよびSiやGeの赤外線透過材を基盤に用いた新しいバイナリ瞳マスクを開発した。これらを用いて、来年度は高コントラスト中間赤外線コロナグラフの世界初の実証に挑む。
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Research Products
(6 results)