Research Abstract |
水系感染症を引き起こす病原性ウイルスの中でも,感染事例が世界中で増加しているヒトノロウイルスは,未だ効率的な培養法が確立されていないことから,添加実験による浄水処理性の評価を行うために必要なウイルス量を確保することが極めて困難であり,培養可能な病原性ウイルスと比べて研究が格段に遅れている.そこで,本研究では,ヒトノロウイルスの物理的な浄水処理性を,遺伝子組換えバキュロウイルスとカイコを用いたタンパク質発現法により発現させたヒトノロウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を用いて評価することを目的とした. 本年度は,凝集沈澱-急速砂ろ過処理におけるVLPsの処理性を調べた.凝集沈澱処理においては,凝集剤としてPACI(pH6.8)およびFeCl_3(pH5.8)を用いた場合に1log以上のVLPsの除去率が得られ,alum(pH6.8)を用いた場合に得られた除去率よりも高かった.また,凝集沈澱-急速砂ろ過処理においては,凝集剤としてPACl(pH6.8)およびFeCl_3(pH5.8)を用いた場合に約3logのVLPsの除去率が得られた.加えて,VLPsと大腸菌ファージQβおよびMS2の処理性を比較したところ,凝集沈澱-急速砂ろ過処理におけるMS2の除去率は,VLPsの除去率よりも高かったため,MS2がヒトノロウイルスの代替指標とはならないことが示された.一方,Qβの除去率は,VLPsの除去率と同程度,あるいは低かったため,MS2に比べて指標性があることが示された.
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