Research Abstract |
平成21年度の私の研究活動は大きく2つに分けられる.1つは米国Woods Hole Oceanographic Institution(WHOI)で行われたGeophysical Fluid Dynamics(GFD)プログラムへの参加であり,もう1つは研究主題である惑星大気大循環に関して,自転軸対称なシンプルモデルを用いた多重平衡解の探索である. WHOIのGFDプログラムは毎年,世界中から博士後期課程レベルの学生が10人程度選ばれ,実施されるサマースクールプログラムである.このプログラムでは毎年,地球流体力学の分野からひとつのテーマが決められる.参加者はテーマに基づいた2週間の集中講義を受け,残り8週間で課題研究を行う.2009年のテーマは「非線形波動」であった.私はこのテーマが,自身の研究にとって重要であると感じ,また世界中から選ばれた優秀な博士課程の学生や,WHOIに所属する又はWHOIを訪れる第一線で活躍する様々な研究者と交流することは,自身の研究者としての力を大きく向上させるものだと思い,GFDプログラムに参加した.このプログラムを通して私は,周辺分野の様々な研究・手法に触れ,さらに,世界中から集まった若手同士で寝食をともにして友情を築くことが出来た.これは,世界で活躍する研究者となるために不可欠なことである. 平成21年度の後半は,惑星大気大循環の多重平衡解について調べた.低速回転惑星(金星)の大気大循環の多重平衡解の存在はMatsuda(1980,JMSJ)によって,軸対称・低自由度モデルを用いて示唆された.また,近年Kido and Wakata(2008,JMSJ)は金星大気を模した大気大循環モデルを用いて,多重平衡解の存在を示した.そこで私は,広範なパラメータ領域における,大気大循環の多重平衡解を探索するために,軸対称でシンプル(ただし高自由度・非線形)な数値モデルを用いてパラメータスイープ実験を行った.実験の結果,多重平衡解を求めることに成功した.また,多重平衡解が存在するのは比較的狭いパラメータ範囲であることがわかった.
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