2010 Fiscal Year Annual Research Report
炭素―金属シグマ結合をもつ遷移金属錯体を用いた触媒的不斉反応の開発
Project/Area Number |
09J00469
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 恵吾 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄 / アリールケトン / ピナコールカップリング / 有機チタン試薬 |
Research Abstract |
鉄は地球上に最も豊富に存在する金属の一つであり,それゆえに最も安価な金属であるとともに,環境への負荷も少ない金属と言える.近年,鉄塩あるいは鉄錯体を触媒として用いた有機化合物の変換反応が多く報告されるようになった.我々は鉄錯体を用いた触媒的炭素-炭素結合形成反応の研究を行ってきた.その研究の過程において.触媒量の鉄存在下,アリールケトンとフェニルチタン試薬の反応によって,高収率でピナコールカップリングが進行する新しい形式の反応を見いだした. 触媒量の鉄錯体存在下,塩化チタン試薬とフェニルリチウムより調製したフェニルチタン試薬とアセトフェノンを反応させ,酸で処理したところ,ピナコールカップリングの生成物である2,3-ジフェニルブタン-2,3-ジオールが80%収率で得られた.それとともにビフェニルが収率97%で生成していた.また本反応はアセトフェノン以外にも種々のアリールケトンに対して適用が可能であることも明らかとなった. 鉄触媒を用いずに同様の条件で反応を試みると,ピナコールカップリング体やビフェニルは生成しなかった.以上の結果より,本反応の触媒サイクルにおいて,4価のフェニルチタン試薬が鉄錯体によって触媒的にビフェニルおよび低原子価のチタンへと不均化する反応が関与していると考えられる.
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