2010 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザー衝撃波によるシリコン高圧金属相の創成
Project/Area Number |
09J00825
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻野 雅之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | フェムト秒レーザー駆動衝撃波 / シリコン高圧金属相 / 凍結機構 / 準静的圧縮 / 結晶構造観察 / 格子欠陥 |
Research Abstract |
本年度は、フェムト秒レーザー駆動衝撃波によってシリコン高圧相が凍結される機構を解明するため、シリコンの基礎的な高圧現象に関する知見を得ることを目的とし、主にダイヤモンドアンビルセルを用いて準静的圧縮を付加したシリコンの結晶構造解析を行った。その中でも特に、透過電子顕微鏡を用いてマイクロからナノメートルオーダーでのミクロな結晶構造の直接観察に重点を置いて実験を行った。このような準静的圧力負荷後の透過電子顕微鏡による直接観察は、シリコンにおいて前例はなく、他の試料においてもほとんど行われていないために、未知の物理現象が多数存在していると考えられる。 高純度シリコンパウダーに、シリコンが高圧相に相転移する圧力以上である15.15GPaを、ダイヤモンドアンビルセルを用いて圧力負荷した。圧力負荷後に試料を常圧下に解放した試料を透過電子顕微鏡により観察したところ、ミクロな視点での結晶構造観察においてもシリコン高圧相の残存は確認できなかった。このことから従来のマクロな結晶構造解析でしか議論がなされていなかった、高圧相の残存の有無がミクロな観察でも明らかとなった。次にフェムト秒レーザー駆動衝撃波によるシリコン高圧相の凍結に起因していると考えられる、結晶粒サイズの変化と、格子欠陥の導入について比較を行うための透過電子顕微鏡観察を行った。結晶粒サイズについては準静的圧縮においても多結晶化が確認されたものの、フェムト秒レーザー駆動衝撃波を負荷した試料と大きな違いは確認されず、凍結の要因ではないと考えられた。そして格子欠陥の導入については、準静的圧縮に比べてフェムト秒レーザー駆動衝撃波は多量の格子欠陥が導入されることが明らかとなった。以上の結果から、シリコン高圧相の凍結の要因として、転位が複雑に絡み合うことにより結晶の変形を阻害し、体積膨張を伴う高圧相から常圧相への相転移を阻害するためであると考えられる。
|
Research Products
(2 results)