2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザー衝撃波によるシリコン高圧金属相の創成
Project/Area Number |
09J00825
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻野 雅之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フェムト秒レーザー駆動衝撃波 / シリコン高圧構造 / 凍結モデル |
Research Abstract |
本年度は、フェムト秒レーザー駆動衝撃波によってシリコン高圧構造が凍結されるモデルを明らかにするため以下の実験および考察を行った。フェムト秒レーザー駆動衝撃波を負荷したシリコンの透過電子顕微鏡観察の結果、フェムト秒レーザー駆動衝撃波を負荷したシリコンには、昨年度までに行った準静的圧縮を負荷したシリコンと比較して高密度の転位が導入されていることが明らかとなった。その転位密度は7×10^<19>m^<-2>であった。この高密度の転位がシリコン高圧構造の凍結に寄与していると考え、次に記す凍結モデルの提案を行った。シリコンの高圧構造が、常圧下で安定に存在する準安定相に相転移するためには、約20%の体積膨張が必要である。その膨張により高圧構造周辺のDiamond構造が応力を受け、通常ではDiamond構造の変形が起こる。しかしフェムト秒レーザー駆動衝撃波を負荷したシリコンでは、Diamond構造には高密度の転位が導入されているため、変形が阻害され、同時に体積膨張を伴う高圧構造から準安定相への相転移も阻害され、高圧構造が常圧下で安定となり凍結が達成される。このモデルを定量的に評価するためにナノインデンテーションを用いた微小硬さ試験を行った。評価の指標には圧縮降伏応力を用いた。 圧縮降伏応力は、材料の変形し難さを表すパラメータである。一般にナノインデンテーションなどによる押し込み硬さ試験によって得られる硬度と、材料の降伏応力は比例関係である。ゆえにナノインデンテーションで測定した硬度上昇により、Diamond構造が微小領域において変形に耐えうる圧力を見積もることができる。硬さ試験の結果、フェムト秒レーザー駆動衝撃波を負荷したシリコンは照射前に比べて、6.4倍の硬度上昇が起こっていることが確認した。 見積もりでは圧縮降伏応力が約5倍に上昇することにより,高圧構造であるβ-Sn構造が安定な応力を負荷することが可能であるとされたため、先述したモデルの有効性が示された。
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Research Products
(5 results)