2011 Fiscal Year Annual Research Report
陽子スピン構造における海クォーク偏極度の寄与の解明
Project/Area Number |
09J00901
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 克朗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 核子 / 核子構造 / スピン / RICH / PHENIX / トリガー / 回路 |
Research Abstract |
平成23年度における研究の主な成果として、以下の点が挙げられる。 まず2011年に我々がこれまで開発してきたトリガーを用いて重心エネルギー500GeV偏極陽子陽子衝突実験でのデータの取得することに初めて成功した。このデータから前後方でのμ粒子の全収量を測定した。さらにシュミレーションを用いたカットパラメーターの最適化、ハドロンなどからくるバックグラウンドの割合の見積もりを行った。また取得データを用いた各種トリガー効率のルミノシティ依存性の評価、およびminimum biasトリガーにおける重複カウントの影響の評価を行い、解析においてこれらの影響を補正した。 以上の評価結果から前後方におけるμ粒子の生成断面積を求めた。またμ粒子の全収量におけるWボソン起源のμ粒子の混合割合を導出した。この割合は最終的目標であるスピン非対称度測定において非常に重要な量となる。 さらに全μ粒子のスピン非対称度をもとめ、これに上記の混合割合を加味することにより初の前後方におけるWボソン起源のμ粒子生成のスピン非対称度の測定に成功した。現在はこの結果を盛り込んだ論文作成のため、バックグラウンドの更なる理解を行い解析の精度向上に努めている。 またμ粒子トリガーの棄却率を向上し、より高輝度でのデータ収集でも耐えられるようにするために、トリガー条件に新たな検出器RPCからの信号も加えるためにテストを行った。これによりトリガーシステムへのRPCの組み込みに成功し、これまでのトリガーに比べ収集効率を維持したまま高い棄却率を獲得できることを確認した。加えてトリガーシステムの安定性の向上のため回路上のFPGAの改良を行った。これにより、出力信号のタイミングを約10nsec早めることに成功し、また各種エラーの詳細な情報のVMEからの読み出しを可能にした。現在はさらに測定の統計を上げるために、この新しいμ粒子トリガーシステムを用いた重心エネルギー500GeV偏極陽子陽子衝突実験データの収集を行っており安定した動作を確認している。このデータ収集により前年度に対し約2倍のμ粒子の統計が見込まれる。また今回のデータ取得に向けμ粒子飛跡検出器の位置分解能向上にためにアノードラインの時定数の変更を行った。これにより今回取得したデータはよりクォリティーの高いものとなっていることが期待される。 以上のようにこの研究の目標である初の前後方におけるWボソン起源のμ粒子生成のスピン非対称度の測定に成功した。現在はこのデータを用いた論文作成を行い博士号を取得する予定である。
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Research Products
(6 results)