2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J00983
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三ツ元 清孝 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 無機化学 / 金属錯体 / 磁性 / 単分子磁石 / 電気化学 / 酸化還元 / 光物性 / 複合機能 |
Research Abstract |
単分子磁石と呼ばれる常磁性金属多核錯体は量子トンネリングによる磁化反転が観測される特殊な磁性体であり、その量子効果が注目されてきた。本研究は、単分子磁石に光応答性や電気伝導性を付与することによる量子効果との複合機能性を探索することが目的である。本年度はそのような複合機能単分子磁石の合理的合成を研究し、(1)光による磁性変換を示す鉄-コバルト14核錯体と(2)有機伝導体の構成要素であるテトラチアフルバレン(TTF)を導入した鉄-ニッケル8核単分子磁石の合成を行った。 (1)の研究成果では8つのFeイオンと6つのCoイオンがシアン化物イオンで架橋された14核錯体について検討した。本化合物は複数の金属錯体ユニットを配位結合によって組み上げることで構築され、外直径約3.5nm、分子量8000以上の巨大なクラスター分子となっている.その構造は分子内水素結合によって安定化されていることが示唆された。また本化合物は結晶溶媒脱離、温度、光によってその電子状態および磁性の双安定性を示すがわかった.この双安定性はFeイオンとCOイオン間の分子内電子移動に起因していることがわかった。現在は、クラスター化のための構造制御因子について調べるため、種々の置換基の導入を検討している。 (2)の研究成果では4つのFeイオンと4つのNiイオンがシアン化物イオンで架橋された8核錯体へのTTF部位導入を検討した。本化合物は8核錯体の周辺に4つのTTF部位が共有結合によって連結されており、TTF部位に由来する可逆な酸化還元を示した。また、極低温で8核錯体部位に由来する単分子磁石挙動が発現することが、磁性解析により明らかとなった。良好なTTFドナーとして振る舞う単分子磁石は世界に例がなく本化合物が初めてである。現在は、末端置換基に液晶部位を連結し薄膜化させ、電界効果トランジスタの輸送層への応用を行っている。
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Research Products
(4 results)