2009 Fiscal Year Annual Research Report
鉄およびコバルト触媒の特長を活かした弱い求核剤を用いるカップリング反応の開発
Project/Area Number |
09J01083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今崎 雄介 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルテニウム触媒 / ハロゲン化 / 置換反応 / アルケニルトリフラート / ハロゲン化アルケニル / カップリング |
Research Abstract |
研究計画に従い,鉄あるいはコバルト触媒を用いてハロゲン化リチウムを求電子剤とし,アルケニルトリフラートをハロゲン化アルケニルへと変換する反応を試みたが,残念ながら鉄触媒では全く反応は進行せず,コバルト触媒も非常に低い収率だった.しかし,様々な反応条件を検討する中でこの反応が低原子価のルテニウム触媒として用いることで高収率で進行することを見つけた. 遷移金属触媒を用いて炭素-ハロゲン結合を形成する反応の例は少なく,アルケニルトリフラートをハロゲン化アルケニルに変換する反応は過去に知られていない.さらに,この反応に必要な試薬は入手容易なものばかりであり,収率も非常に高いため実用的であり,価値の高い成果といえる.塩素化,臭素化,ヨウ素化のいずれの反応にも適用可能であり、求電子剤も幅広く鎖状,環状のアルケニルトリフラートを用いることが可能である.この反応を用いることで,ハロゲン化アルケニルの合成が対応するケトンから2ステップで行うことができ,特に非対称なケトンから位置選択的な合成が可能である点で,従来の合成法より優れている. さらに,ハロゲン化物イオンとの反応だけではなく,亜鉛チオラートを求核剤としたカップリング反応も発見した.ルテニウム触媒を用いた炭素-硫黄結合のカップリング反応は過去に例がない.以上の様に鉄やコバルトを触媒として用いるという計画からはずれてしまったが,ルテニウム触媒の新たな性質を発見したこと,さらにアルケニルトリフラートのハロゲン化という新しい反応の開発に成功したことは大変意義のある成果といえる.
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