2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄およびコバルト触媒の特長を活かした弱い求核剤を用いるカップリング反応の開発
Project/Area Number |
09J01083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今崎 雄介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルテニウム触媒 / アリールトリフラート / ハロゲン化アリール / ハロゲン化 / 置換反応 / カップリング |
Research Abstract |
私は昨年度,研究目標のひとつであったアルケニルトリフラートをハロゲン化アルケニルへと直接変換する反応の研究を行い,計画していた鉄やコバルトではなく,低原子価のルテニウム錯体が高い触媒活性を示すことを発見した.その知見を活かし,今年度は,今まで達成できていなかったアリールトリフラートをハロゲン化アリールへと変換する反応の検討を行い,新たに[Cp^*RuCl]_4を用いることで収率良く簡便に臭化アリールおよびヨウ化アリールを合成できることを発見した.パラジウム触媒を用いた同様の反応が2010年に報告されたが,量論量のアルキルアルミニウムを用いる必要があり,収率も高くないうえ,ヨウ化アリールの合成ができないという欠点があり,簡便さ,官能基耐性,収率,ヨウ化アリールの合成が可能であるといった点で私が開発したルテニウム触媒を用いた反応は優れているといえる.この反応を用いれば,フェノールから簡便にハロゲン化アリールを合成することができ,それらはGrignard反応剤などの求核剤に変換したり,ラジカル反応に用いたりすることで幅広く合成に用いることができるため,大変有用な反応と考えられる.また,このような反応は,上述したパラジウム触媒を用いたもの以外に報告例がなく,新規性が高いことからも重要な研究成果といえる.現在のところ反応機構については明らかにできていないが,今までsp^2炭素-(擬)ハロゲン結合の変換反応にあまり用いられてこなかったルテニウム錯体の新たな性質を見出した意義は大きいと思われる.
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