2009 Fiscal Year Annual Research Report
ストリング/ブラックホール対応を用いた超弦理論における時空構造の解明
Project/Area Number |
09J01105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒谷 雄峰 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ブラックホール / 粘弾性体 / レオロジー / 相対論的流体力学 |
Research Abstract |
時空が熱力学的な振る舞いをすることは古くから指摘されており、特にブラックホールなどのホライズンを持つ時空についてはそのような振る舞いは顕著になる。このような熱力学的振る舞いは時空の普遍的な性質であり、時空の性質を理解するには必ず考察すべき点である。超弦理論の立場からは、ブラックホールは強く相互作用したストリングやブレーンの束縛状態として記述されるが、これらの物体はゴムに似た振る舞いをすることから、ブラックホールあるいは時空をある種の連続体として取り扱うには、流体的なものとしてでは無く、剪断応力を持ち粘性も含むような連続体、つまり、粘弾性体として記述する必要が生じると予想される。粘弾性体の力学は古くから研究されており様々なモデルが存在するが、昨年度に共同研究者らにより、対称性の縛りから最も一般的な非相対論的粘弾性体を普遍的に記述する有効理論が得られた。ただ、現時点では相対論的な粘弾性体について明確な理解はされておらず、例えば加速膨張する時空上の粘弾性体がどのような振る舞いをするかといったことを調べることは出来ない。そこで、局所的には熱力学的な平衡状態にあるような一般相対論的粘弾性体の研究を進めている。基本的なアイデアとしては、非相対論的な場合と同様、時空の計量と物質の歪みの情報を含む内部計量の二つの計量を用いることで粘弾性体の運動を記述しようと試みている。この理論は流体極限として相対論的ナビエ-ストークス方程式を含むと期待されるが、相対論的ナビエ-ストークス方程式は因果律の問題を含んでおり、それが粘弾性的な効果により解消されれば相対論的流体力学の発展にも繋がる。実際にその解消を示唆する結果も既に得ている。また、重力そのものもある種の弾性力として扱うことが出来るかという点についても議論を進めており、時空の振る舞いのより深い理解が得られると期待している。
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