2010 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質活性に係わる分子間相互作用の固体NMRによる研究-βアミロイドを一例として
Project/Area Number |
09J01128
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 裕一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | βアミロイド / クルクミン / 固体NMR / オリゴマー / βシート / 立体構造解析 / 凝集 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
1.アルツハイマー病は、42残基のβアミロイド(Aβ42)が脳内で凝集することにより引き起こされる。ウコンに含まれる黄色色素であるクルクミンは、Aβ42凝集体の脱会合を促進することが報告されている。本研究代表者は昨年度に、固体NMRを用いた研究により、クルクミンがAβ42凝集体のLeu-17~Ala-21のβ-シートと相互作用しており、本相互作用にはクルクミンのメトキシ基及びヒドロキシル基が重要な役割を果たしていることを示唆した。本年度は、クルクミンとAβ42凝集体のC末端β-シートとの相互作用を解析する目的で、Met-35~Ala-42を^<13>C標識したAβ42凝集体の調製を進めている。現在までに、Aβ42の合成に用いる^<13>C標識アミノ酸の保護基導入反応が完了している。 2.Aβ42の凝集中間体であるオリゴマーは神経細胞毒性が非常に高いことから、Aβ42の毒性本体と考えられている。本研究では、直径4~10nm、長さ200nm程度のオリゴマーであるAβ42プロトフィブリルにおける分子間平行β-シート構造の有無を固体NMRにより検証した。分子間の双極子相互作用のみを観測するため、Ala-21のC_αのみを^<13>C標識したAβ42と、COのみを^<13>C標識したAβ42を1:1で混合した。Aβ42を37℃でインキュベーションし、生成したプロトフィブリルをゲル濾過により分取、直後に凍結乾燥することにより、プロトフィブリル構造を維持した粉末試料を調製した。炭素間距離を選択的に測定できる回転共鳴法(R2法)を用いて解析した結果、Aβ42プロトフィブリルのAla-21における分子間距離が6Å以上であることが判明した。本結果は、プロトフィブリル形成の駆動力が分子間平行β-シートの形成ではなく、疎水性相互作用や電気的相互作用であることを示唆している。
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