2010 Fiscal Year Annual Research Report
微小なノイズがもたらす進化への大きなインパクトに関する理論的研究
Project/Area Number |
09J01131
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
上原 隆司 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ゲーム理論 / 協力行動 / 連合闘争 / サイズ成長モデル / 問題解決行動 / 弱い者いじめ |
Research Abstract |
群れを作る動物で、どのような場合に群れ個体間での協力関係が成り立つのかを調べるため進化ゲーム理論やコンピュータシミュレーションを用いて解析を行った。本年度は2対1の状況で個体の強さが異なるときに、勝ち取った資源を仲間で均等に分け合う場合、強い者が多くとる場合、努力量に比例して受け取る場合とで仲間内での協力がどの程度起こるかを比較した。均等に分け合う時にはペアの力がほどほどに釣り合っている時に協力が起こるが、強い方が多く分け前をもらえる状況では弱い方の協力が得られにくく、協力が起こるための条件がよりシビアになる。一方で努力量に応じて分け前が増える時には、弱いペアからの協力が得られやすく、ほとんど単一で敵に対峙する状況が生まれないことも分かった。 またゼブラフィッシュを用いて葛藤的状況における行動実験および理論モデル研究を行った。餌と捕食者を同時に提示され葛藤的状況に置かれた時、餌が以前そこにあったことを知っている魚は捕食者が視認できていても活発に動き回り、捕食者の存在を先に知っていた魚は餌が目に入っていても避難行動をとった。このような記憶メカニズムを取り込んだ物理モデルを用いて葛藤的状況下での適応的な行動について考察を進めた。 同一空間に棲息する個体間では資源の奪い合いの結果、1個体だけ大きくなったり、等間隔サイズが維持されるなど、様々なサイズ構造が現れる。これを理解するために個体間でのいじめのゲームとサイズ成長を組み合わせたシミュレーションモデルを構築して解析した。結果、各個体が同様な成長を見せる場合、一個体だけ大きくなる場合、等間隔サイズが維持される場合の3つが現れることが分かったが、特に等間隔サイズは上位の者が自分より下位の者をいじめる「弱い者いじめ」によって起こる可能性があると分かった。
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