2011 Fiscal Year Annual Research Report
イソプレニルトリプトファン残基を含むペプチドに関する化学的研究
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09J01228
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
辻 史忠 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ComXフェロモン / 翻訳後修飾 / イソプレニル化 |
Research Abstract |
トリプトファン残基のイソプレニル化は、現在までのところ枯草菌のComXフェロモンにおいてのみ確認されている翻訳後修飾であり、生物界における普遍性は未だ明らかにされていない。そこで本研究は、この翻訳後修飾の生物界における分布の検証を目的とする。 具体的にはin vitro酵素反応系を用いることで修飾酵素ComQの認識するコンセンサス配列の推定を試みた。in vitro酵素反応とは、枯草菌RO-E-2株由来の修飾酵素ComQRO-E-2にComX_<RO-E-2>フェロモン前駆体およびゲラニルピロリン酸を加えインキュベートすることで、ComX_<RO-E-2>フェロモン前駆体にゲラニル基を転移させる反応である。これまでの研究により、前駆体の全長である58残基からなる[1-58]ComX_<RO-E-2>フェロモン前駆体を用いて酵素反応を行い、C末端側の7残基がゲラニル化されたペプチドをMALDI-TOF-MSで検出することに成功した。また、LC-MSを用いた定量系の確立に成功し、それを利用して酵素反応条件を検討した結果、ゲラニル化されたペプチドの収率(検出効率)を飛躍的に向上させることに成功した。 前年度は様々な長さの前駆体を用いて酵素反応、定量を行ったところC末端から12残基にあたる[47-58]ComX_<RO-E-2>がゲラニル化の起こる最短配列であることを見出した。さらにこのペプチドを基にしたC末端変更体、アラニン置換体という2種の類縁体を用いた酵素反応の結果、トリプトファン残基のC末端からの距離の重要性、ゲラニル化に重要ないくつかのアミノ酸を同定した。しかし、重要性が示唆されたアミノ酸残基は他の菌株由来のComXフェロモンにはほとんど保存されておらず、さらにComQ_<RO-E-2>は他の菌株由来のComXフェロモンに対して全く交差活性を示さなかった。これらの結果からComXフェロモンにはコンセンサス配列が存在しないことが示唆された。また、イソプレニル化を受けるシステイン残基を有しているにも関わらず、コンセンサス配列の存在していないタンパク質の一つであるRabタンパク質とComXフェロモンには多くの共通点が存在していることを見出した。このことよりComXフェロモンはRabタンパク質のような機構、あるいは全く新しい機構でイソプレニル化されることが示唆された。
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