2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J01899
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成子 篤 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙背景放射 / インフレーション |
Research Abstract |
宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)の温度ゆらぎの統計性における非ガウス性が、インフレーションモデルの特定に関して有用な観測量であるとして近年注目を集めている。そこで、弦理論に基づいたインフレーションモデルにおける非ガウス性を明らかにすることにより、それらの観測可能性に関する研究をこれまで行ってきた。本年はさらに「観測可能性」に迫り、光子の発展に注目し研究を行った。 これまで非ガウス性として計算されてきたものは、CMBが伝播を開始する時の宇宙の密度揺らぎ(曲率揺らぎ)の非ガウス性である。しかしながら我々が観測するのはCMBの温度揺らぎにおける非ガウス性であり、我々の観測するCMBには、光子の伝播の最中に伝搬する時空の揺らぎに起因した非ガウス性(二次的非ガウス性)が含まれる。もしも二次的非ガウス性が大きければ、それに始原非ガウス性が隠されて見えなくなる可能性がある。特にこれに関して、無視できない大きさの二次的非ガウス性が生成される可能性が近年指摘された。 私は光子の分布関数の時間発展を記述する基礎方程式であるボルツマン方程式を、二次的非ガウス性に関係する摂動論の二次のオーダーまで一般的に書き下した。また導出した方程式のゲージ不変性を確かめ、種々の量のゲージ変換則を確かめた。線形理論においては観測される温度揺らぎの観測者依存性は、モノポール、ダイポールのみに現れる事が知られていたが、二次では全てのマルチポールが観測者依存性を持つことを確かめた。これにより温度揺らぎを計算する上で、どのような観測者が観測する温度揺らぎを求めたのか、またどのような観測者が観測する温度揺らぎを計算すべきかを慎重に扱う必要が出てきた。加えてこれまで知られていた観測者を変更した際の温度揺らぎの変換公式の間違いを見いだした。
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Research Products
(8 results)