2009 Fiscal Year Annual Research Report
カンコノキ-ハナホソガ絶対送粉共生系の進化的安定性とその維持機構
Project/Area Number |
09J01986
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 龍太郎 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 相利共生 / 送粉共生 / 制裁機構 / 進化的安定性 / カンコノキ / ハナホソガ |
Research Abstract |
生物が相互に利益を提供しあう生物間相互作用は相利共生と呼ばれ、あらゆる生物界に普遍的に存在するが、その進化は自明ではない。なぜなら相利関係にある生物といえども、相手に利益の提供を行わず一方的に利益を享受するように振る舞った方が適応的であるからである。それゆえ、一方が過度に利己的に振る舞った場合、それに対して他方が制裁をもって報いる場合に限り相利共生関係は安定に進化しうると理論的に予測されてきた。しかしながら、そのような機構の実証例は驚く程少ない。私はカンコノキとその送粉を排他的に担うハナホソガとの絶対送粉共生系を材料に相利共生の進化的安定性に関する課題に取り組んできた。カンコノキ属植物は種特異的なホソガ科ハナホソガ属のガのみに送粉されており、一方ハナホソガの幼虫はカンコノキの種子のみを食べて成熟する。そのため両者は相互依存の関係にあるが、もしハナホソガが重複産卵を行うと、種子の食い尽くしが起こり植物側に送粉の利益をもたらさないことになる。私は、ウラジロカンコノキにおいて、ハナホソガが重複産卵を行った場合、そのような雌花を選択的に中絶させることを明らかにした。これはカンコノキがハナホソガの過剰搾取に対して雌花ごとホソガの卵を殺すという制裁で応じているという興味深い可能性を示唆している。これらの結果は、国際的な生態学の学術誌であるEcology Lettersにて発表を行った(Goto et al. 2010)。さらに重複産卵に対する雌花の選択的中絶がカンコノキ属に広範に見られる現象かどうかを検証するために、奄美大島において、カンコノキ属4種の雌花の定期的なサンプリングを行った。今後は継続して解析を行い、選択的中絶やハナホソガが重複産卵を回避しているかどうかを明らかにする予定である。また、ウラジロカンコノキにおいて、結実の遅延がハナホソガ幼虫の生存率の低下を招くことを見いだし、その成果は日本進化学会において発表した(ポスター)。
|