2010 Fiscal Year Annual Research Report
カンコノキ-ハナホソガ絶対送粉共生系の進化的安定性とその維持機構
Project/Area Number |
09J01986
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 龍太郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 相利共生 / 送粉共生 / 植物-動物間相互作用 / 進化的安定性 |
Research Abstract |
相利共生関係が進化的な時間スケールの中でどのように維持されてきたのかは、進化生態学上最も重要な問いの一つである。しかしながら、依然としてその解決にはほど遠い状況にある。私はカンコノキ属の樹木とハナホソガ属の蛾の送粉共生をモデル系として、この問題の解決に取り組んできた。カンコノキ属の樹木は、雄花から雌花への花粉の運搬(送粉)を種特異的なハナホソガ属の雌にのみ依存しており、一方ハナホソガ属の雌は授粉と同時に雌花に卵を産みつけ、やがて孵化する幼虫は果実内の種子の一部を食べて成長する。つまり、カンコノキ属とハナホソガ属は相互に繁殖を依存しあった絶対相利関係にある。 共生系の進化的安定性や動態を考える上で、共生者間の相互作用だけでなく、共生系に関わる様々な生物がどのように共生系に影響を及ぼしているのかを理解することは必須である。しかしながら、そのような観点から行われた研究は依然として限られている。カンコノキ-ハナホソガ系には、様々な捕食寄生者、種子寄生者、種子散布者が関わっているが、これらの生物が系の動態にどのような影響を及ぼしているかは明らかになっていない。そこで、私は、コマユバチ科の寄生蜂がハナホソガ幼虫への捕食寄生を介してカンコノキの種子生産にどのような影響を与えているかについて検証を行った。その結果、コマユバチに寄生されるとハナホソガ幼虫は未成熟の段階で死亡し、種子食害量が減少していることが明らかになった。さらに、カンコノキ属3種を用いた種間比較の結果、コマユバチによる種子食害量の減少は、どの種についても観察されることも明らかになった。つまり、コマユバチはカンコノキ属の種子生産を増加させる間接的な協力者として、この絶対共生系に広く関わっている可能性がある。
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Research Products
(5 results)