2010 Fiscal Year Annual Research Report
分泌性Wnt結合蛋白質によるWntの拡散性の制御とその活性勾配の形成における役割
Project/Area Number |
09J02127
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三井 優輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Wnt / sFRP / 拡散性 / モルフォゲン / 定量生物学 / 抗体 / 糖鎖 |
Research Abstract |
これまでにsFRPがWntの拡散性を上昇させ、シグナル範囲を広げるという知見を得たが、更に分子レベルでこの現象を理解すべく以下の解析を行った。 (1)WntおよびsFRPの動的拡散光変換型蛍光蛋白質(mKikGR)をWntやsFRPに融合したものをツメガエル初期胚で発現させると分泌され、従来通り細胞間隙に分布が見られた。これに対し局所的に近紫外光を照射し、緑から赤への光変換を行い、赤色蛍光の減衰のデータを継時的に取得した。またこの蛍光減衰が理論的にどのように変化するか拡散係数等のパラメータで記述する数式を拡散方程式から得ることに成功した。継時データを得られた式にフィッティングしたところ良好な結果を得て、細胞間隙の微小部分での分泌蛋白の挙動が1次元の拡散と見なせる可能性を示した。また同時に見かけの拡散係数を求めることができ、WntよりもsFRPのほうが2倍以上拡散係数が大きく、更にsFRP存在下ではWntの拡散性がsFRPと同程度まで上昇することを見出した。このような新規の手法を開発し、脊椎動物の分泌蛋白質の拡散係数を求めたのは初めてのことである。 (2)ヘパラン硫酸などECM成分による制御前項で得た拡散係数は、自由拡散していると仮定したときの値よりは著しく小さいものだった。このためWntやsFRPは何らかの成分と相互作用していると考えられた。以前より分泌型の蛍光蛋白質SP-Venusが細胞間隙には検出されないことを見出していたが、これにheparin結合ペプチド(16アミノ酸)を融合させると興味深いことに細胞間隙に分布するようになった。そこで細胞間隙に見えないSP-Venusが実際に分泌されているか否かが重要となった。これを検討するため抗HA抗体のcDNAをクローニングして膜貫通ドメインを融合させたものをツメガエル胚で発現させたところ、離れた領域で発現させたSP-Venus-HAを捕捉でき、実際に細胞からの分泌を確認できた。一連の実験から、分泌蛋白質がglycosaminoglycan鎖と親和性をもつことが細胞間隙に安定的に存在できる十分条件と示せた。
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