2009 Fiscal Year Annual Research Report
NMR緩和分散法と理論化学計算に基づいた蛋白質遷移状態の構造決定法の開発
Project/Area Number |
09J02201
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横川 大輔 Osaka University, 蛋白質研究所, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 分子シミュレーション / 核磁気共鳴(NMR) / 揺らぎ / 積分方程式理論 |
Research Abstract |
酵素などの蛋白質は1つの定まった構造で固まっているわけではなく、揺らぐことで機能を発揮すると考えられている。近年、蛋白質の構造揺らぎについての情報がNMR実験を用いて報告されるようになってきた。しかし得られる情報は主に、蛋白質の揺らぎの存在を証明するために用いられ、そこから構造の揺らぎについて直接理解するところまでは至っていない。一方、分子シミュレーションを用いた理論的アプローチでも蛋白質の構造揺らぎを詳細に検討している例は非常に限られる。それは、計算すべき原子数が莫大な数になるだけでなく、個々の原子が共有結合で結ばれていることにより、蛋白質がとりうる自由エネルギー局面が非常に複雑になるためである。そこで本研究では、NMR緩和分散法で得られる実験的な情報と分子シミュレーションを用いた理論的手法を組み合わせることで、蛋白質の構造揺らぎ、および反応の遷移状態を解析するための手法を開発することを目的とする。 本年度は分子シミュレーションにおける解析手法、ならびにNMR実験で得られる情報を利用した分子シミュレーションの開発を行った。前者では、エネルギー表示の積分方程式理論に基づき、高精度に熱力学量を算出できる式を新たに導出した。後者では、導出した式と核オーバーハウザー効果(NOE)から得られる情報を組み合わせた新規解析法の開発を行った。この解析法の有用性を検討するために、ミニ蛋白質のフォールディング問題に取り組んだところ、実験的に得られている温度変化に伴うフォールド状態の割合の変化を正しく再現することに成功した。
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