2010 Fiscal Year Annual Research Report
NMR緩和分散法と理論化学計算に基づいた蛋白質遷移状態の構造決定法の開発
Project/Area Number |
09J02201
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横川 大輔 大阪大学, 蛋白質研究所, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 分子シミュレーション / 交換反発エネルギー / 自由エネルギー解析 / ペプチド / PHドメイン / ヘリックス / 力場 |
Research Abstract |
昨年度開発した手法を用いて、Kiaa0640蛋白質のPHドメインにおけるα-helix部分の安定性について検討を行った。この部分はPHドメインが単独で存在するときはα-helix構造を取るのに対し、PHドメインが脂質膜と相互作用するとランダムコイル様構造を取ることが、固体NMRの解析を通じて示されている。そこで、このα-helix部分19残基(PH19)の安定性について、水中での分子シミュレーションを用いて検討した。比較として、4~19残基までをアラニン(PH19A)、グリシン(PH19G)に置換したペプチドについても計算を行った。その結果、α-helixの安定性は、PH19>PH19A>>PH19Gであることが分かった。ポリグリシンはα-helixを取りにくく、ポリアラニンも水溶液中ではα-helixを取る割合はそれほど高くないことが知られている。以上からPH19は水溶液中で比較的安定なα-helixを取ることが確認,された。 上記の計算はAmber96と呼ばれる力場を用いて行った。しかし、この力場の種類を変えるとα-helixの安定性が大きく変化することが、これまでの研究で報告されている。この原因の一つに力場の作成方法がある。広く用いられている経験的な力場は、実験結果を再現するようにパラメータを決定している。しかしこの方法では、すべての原子種に適切なパラメータを決定することは非常に困難である。そこで、申請者はこれらのパラメータを量子化学的手法で決定することを試みた。本年度は近距離相互作用で最も重要である交換反発エネルギーについて検討を行った。得られた式は、他の量子化学計算で算出した値を良く再現するだけでなく、経験的ポテンシャルのパラメータの改良にも用いることが可能であることが確認された。
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