2011 Fiscal Year Annual Research Report
NMR緩和分散法と理論化学計算に基づいた蛋白質遷移状態の構造決定法の開発
Project/Area Number |
09J02201
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横川 大輔 名古屋大学, 理学研究科, 助教
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Keywords | 溶液内化学反応 / RISM-SCF-SEDD / 分子間ポテンシャル / 量子化学計算 / シスプラチン |
Research Abstract |
エントロピーに注目した化学反応計算 本年度は溶液内化学反応の詳細な解析を行った。取り組んだ系は、抗がん剤の一つであるシスプラチンの加水分解反応である。この化合物は、白金に2つのアンモニウム配位子、2つの塩化物イオンが配位した4配位錯体である。血中では、この4配位錯体として存在する一方で、細胞内では水分子による置換反応を受けて、塩化物イオンが水分子に1つ置換されたモノアコ錯体、2つ置換されたジアコ錯体になることが提案されている。この水和により形成された錯体がDNAと結合し機能を発揮する。この細胞内外で、シスプラチン、モノアコ、ジアコ錯体の安定性を議論するためには、水和を考慮した高精度な量子科学計算だけでなく、塩化物イオン濃度に着目したエントロピックな考察も必要である。本研究ではこれまでに開発してきた、量子科学計算と溶媒和を統計力学的に解析できるRISM法を組み合わせたRISM-SCF-SEDD法を用いて解析を行った。さらに、濃度に着目した考察は統計力学に基づき行った。これらの結果はDalton Transaction(40,11125(2011))で報告済みである。 量子科学的手法に基づく分子間ポテンシャルの設計 上記の蛋白質、シスプラチンの計算では、分子間の相互作用を記述するためのポテンシャルが非常に重要になってくる。ここでの研究では、従来の経験的に決められたパラメータセットを用いて記述されるようなポテンシャルを用いていた。このポテンシャルはシンプルな系では、妥当な結果を与えることが分かっている一方で、金属を含むような複雑な系においては正しい結果を与えないことが多々ある。そこでこの経験的に決定されてきたポテンシャルを、量子科学的手法に基づき、非経験的に決定する手法の開発を前年度から進めた。本年度は導出した手法、結果をまとめて、学術誌Chem. Phys. Lett.に投稿した。
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Research Products
(6 results)